公益財団法人日本花の会

   

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桜の名所づくり

桜の園芸品種認定制度

桜は変異性に富んだ観賞性が高い樹木であることから、現在も新たに発見または育成された桜が新品種として発表されており、 ‘ 河津桜 ’ による桜名所地など新しい園芸品種は地域の活性化に大きく貢献しています。 当会では、2013年度より桜の新しい品種を活用して名所づくりを進める住民団体や地方自治体をサポートすることを目的とした 「桜の園芸品種認定制度」を設けました。この制度は、新しい桜を名所づくりに活用するに当って、その名称を整理するとともに品種の保護や発展に寄与するため、 当会で特性を調査した上で園芸品種として認定するものです。認定は当会の規程に基づいて書類審査、標本審査、現地審査を経て認定し、認定された品種は当会のホームページや会報などで公表します。

申請に関する詳細については下記までお問い合わせ下さい。

〒307-0044 茨城県結城市田間2217 公益財団法人日本花の会 結城農場
TEL:0296-35-0235 FAX:0296-35-3385

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認定品種の紹介

(認定番号 第032号) ‘ 手柄ザクラ (テガラザクラ)’ Cerasus leveilleana ‘Tegara-zakura’

桜
品種特性詳細
2021年5月13日認定。 申請者 姫路市
室井 綽(ひろし)氏(元、富士竹類植物園長)が手柄山中央公園内で発見した桜です。室井氏の著書『姫路の生物・正続』には、「フタエカスミザクラ 世界一の珍品」と紹介されており、「1996年3月に花弁数が10枚で二重咲となったカスミザクラ系の桜を発見。周辺の桜を調べたが二重咲の桜はその一本きりであった。その後、所在が不明だったが、1999年3月に再発見できた。この木は世界中でも唯一本の珍木であろう。市民の協力を得て永久に保存したい」と記されています。
2015年4月頃に姫路市立手柄山温室植物園職員が公園内を探索して改めて原木を発見。2020年6月現在、樹高は約7m、地際の幹周は95㎝、地表面より約1.2m付近で幹周56cmと58cmの二幹に分岐しています。桜の樹齢は60~70年生と推定されます。
この桜は、葉および葉柄、小花柄に毛があることや成葉裏面が緑色であることなどからカスミザクラそのものと考えられます。原木は植樹した個体と考えられないこと、地区周辺を開発する前はカスミザクラが自生する雑木林であったことなどから、自然状態で突然変異により生じた遺伝的に独立した新しい品種といえます。
なお、カスミザクラが半八重咲きとなった既存品種としてはハンヤエカスミザクラ(Cerasus leveilleana f.semiplena)が報告されていますが、‘ 手柄ザクラ ’ は旗弁でなく花弁数が7~14枚と多いこと、花弁先端の切込みが少ない、雌ずいが雄ずいより長いことなどの点で区別されます。
この桜は、花は中輪咲で花つきがよいこと、花弁の重なりが厚く、花のボリューム感があること、蕾の淡紅色と白い花色の組み合わせが美しいなど、‘ 染井吉野 ’ の開花後に、新緑の中で花を咲かせる遅咲きの桜として、桜の観賞期間の延長を図る素材として優れています。
手柄地区連合自治会が ‘ 手柄ザクラ ’ と命名し、地域の自然環境や歴史を物語るシンボルに位置づけることで、小中学校の理科の教材としての活用も期待されます。

(認定番号 第031号) ‘ 日光紅姫桜 (ニッコウベニヒメザクラ)’ Cerasus ‘Nikko-benihimezakura’

桜
品種特性詳細
2021年3月28日認定。 申請者 日光桜遊会
この桜は東京大学理学部附属植物園(現・大学院理学系研究科附属植物園日光分園、通称:日光植物園)に勤務していた故・久保田秀夫氏が自宅で栽培していた品種で、現在はご子息の智氏が大切に保存している桜です。久保田秀夫氏は栃木県日光市を拠点に、野生の桜に関する種内変異や雑種およびそれらの分布に関する調査・研究とともに、‘ 雨情枝垂れ ’ の発見・命名や十月桜の実生から ‘ 思川 ’ を育成するなど、園芸品種にも深い造詣をお持ちの研究者でした。この桜の由来に関する詳細は不明ですが、1980年以降に植栽された個体で、樹齢は約40年以上と推定されます。2020年4月現在、樹高は約8.0m、樹幹は地表面より約1mの位置で幹周61cmと29cmの二幹に分岐しています。
葉や花などの形態的特性からヤマザクラとマメザクラもしくはキンキマメザクラが関係した品種と推定され、類似品種とされる ‘ 正福寺桜 ’(別名 ‘ 湯村 ’ )とは樹形が枝垂れ性でないこと、‘ 摩尼八重山桜 ’ とは副がくの有無、雌ずいの数や葉化の有無、葉柄の毛の有無などで区別されることから新品種として認定しました。
日光の地で桜を愛し生涯桜の研究に情熱を注いだ父親が植えた桜を守り続ける久保田智氏の想いと、地元ゆかりの多様な桜に魅せられて桜を通した地域住民の交流や活性化を目指す会員の思いを込めるとともに、この桜が紅色でフリル状の愛らしい花弁と細い枝ぶりでたおやかな美しい風情を持つことに因んで、日光桜遊会により ‘ 日光紅姫桜 ’ と命名されました。
日光桜遊会は日光門前町に店舗を構える店主を中心に構成する団体で、日光を開山した勝道上人に因む‘勝道彼岸’を植樹するなど、桜を素材に日光市の活性化を図るべく活動しています。日光紅姫桜は ‘ 勝道彼岸 ’ が満開頃に開花が始まる早咲きの八重桜で、観賞性が高いことから、今後、日光にゆかりのある桜としての活用が期待されます。

(認定番号 第030号) ‘ 小郡桜(オゴオリザクラ)’ Cerasus jamasakura ‘Ogoori-zakura’

桜
品種特性詳細
写真提供 おごおり地域づくり協議会
2021年2月11日認定。 申請者 おごおり地域づくり協議会
原木は山口県山口市小郡にある泉福寺址の墓地にあり、類まれな非常に美しい八重桜の大木として古くから多くの人に親しまれてきたことから、小郡町(当時)は1982年3月に ‘ 小郡桜 ’ の名称で天然記念物に指定しました。
指定当時、地上1mの幹囲が2.7mと記録されています。市町合併により山口市指定天然記念物となりましたが、2017年に枯死、指定は解除されました。 このため、2019年1月、小郡地区の各種団体が協議した結果、「‘ 小郡桜 ’は、市の天然記念物に指定されたときに未記載の品種として確認された貴重な桜であるため、接木等で増やした、原木と同じ特徴を持つものに限る。」と定義されました。 葉や花などの形態的特性からヤマザクラに属する品種と推定され、類似品種である ‘ 佐野桜 ’ とは、がく筒やがく片および苞の形が異なることから新しい園芸品種と認定しました。小郡地区では長年にわたり接木や取り木などで苗木を増殖し、小郡総合支所前、其中庵(種田山頭火の旧居)など地域の各所に植栽してきました。
小郡町民歌「ふるさと小郡」や小郡南小学校の校章に用いられるなど、旧小郡町のシンボルとして愛され、現在も ‘ 小郡桜 ’ による名所づくりが継続されています。
‘ 染井吉野 ’ が満開頃に開花が始まる早咲きの八重桜で、小郡全域で保護・育成され、特色ある地域づくりや郷土の誇り・愛着を醸成する貴重な資源としての活用が期待されます。

(認定番号 第029号) ‘ 神山枝垂桜 (カミヤマシダレザクラ)’ Cerasus ‘Kamiyama-shidarezakura’

桜
品種特性詳細
2021年1月15日認定。 申請者 NPO法人神山さくら会
早咲きの枝垂れ桜の苗木育成に取り組んでいた徳島県名西郡神山町在住の谷 高重氏(故人)は、過疎化が急速に進む現状から脱却し、元気で賑わいのある「枝垂れ桜で日本一の美しい町」を目指して、1996年に協力者とともに苗木を増殖し、町内に植樹する活動を始めました。2002年に神山さくら会が発足し、育成した苗木を町内の道路沿いに植栽する「神山さくら街道」づくりに向けて活動の幅が広がりました。2007年にはNPO法人神山さくら会が設立され、地域と連携しながら苗木育成と植栽管理に取り組んでいます。
現在では、神山さくら街道をはじめ、ゆうかの里、神山森林公園、徳島市立とくしま植物園、花見山・心の手紙館(鳴門市)などが早咲きの枝垂れ桜の名所地として賑わっています。また、地元業者が苗木の生産・販売を実施しているため、県内の至る所で観ることができます。
この桜は枝垂れ桜や神山枝垂れと呼ばれていますが、原木の所在や来歴は不明でした。NPO法人神山さくら会の理事長:阿部 悦宏氏と事務局長:久保 素弘氏の調査により、原木は石角 勝重氏(故人)宅にあり、谷氏はこの個体から苗木を接木増殖し、以後、増殖した個体から穂木を採取していたことが判明しました。
その後、原木は枯死しましたが、石角氏より譲られた苗木から育った個体が前野 亮治氏宅に現存しており、樹齢は60年以上、樹高は約13m、地表から1.3mの幹周は約1.5mの大木となっています。原木の起源は不明ですが、他に類似する既存品種がないことや、前野氏宅より大きな個体が知られていないことから、石角氏宅にあった個体を ‘ 神山枝垂桜 ’ の原木と判断しました。
枝垂れ桜の名称は、狭義ではエドヒガンの枝垂れ性個体(シダレザクラ、別名・イトザクラ)、広義では枝垂れ性品種の総称です。‘ 神山枝垂桜 ’ はエドヒガンもしくはシダレザクラと他種との雑種と推定されます。シダレザクラとは花の大きさ・がく筒の形が、‘ 盛岡枝垂 ’ とは花色・がく筒の形・花柱の毛の有無が、‘ 枝垂染井吉野 ’ とは成葉全体・葉縁鋸歯の形がそれぞれ異なることから新しい園芸品種として認定しました。
長年に渡り苗木の育成、植栽・管理に取り組んできた神山さくら会初代理事長の谷氏が命名した ‘ 神山枝垂桜 ’ は、花が大輪で花着きがよいなど観賞性が高いこと、開花期間が長く、樹勢が強健であること、現地ではサクラ類てんぐ巣病の罹病個体がみられないことなど、枝垂れ性の品種としては極めて優秀な品種です。今後は神山町を代表する桜として、この桜による名所地が全国に誕生することが期待されます。

(認定番号 第028号) ‘ 蜂須賀桜(ハチスカザクラ)’ Cerasus × kanzakura ‘Hachisuka-zakura’

桜
品種特性詳細
2020年12月10日認定。 申請者 NPO法人蜂須賀桜と武家屋敷の会
この桜は、江戸時代末まで「乙女桜」の名で徳島城御殿にあった桜で、明治維新の廃藩置県の際に徳島城主・蜂須賀 茂韶(もちあき)の指示により、上級武士の屋敷とともに家臣の原田 一平の屋敷内に移されました。現在、その屋敷(徳島県徳島市かちどき橋3丁目)は国の登録有形文化財、桜は2019年8月に徳島市保存樹木に指定されています。桜は旺盛に成育しており、2020年6月現在の樹の大きさは樹高約12m、樹幅は約12m、地際より幹周1.35m、0.82m、0.72m、0.65mなど複数の樹幹に分岐しています。樹齢は桜の種類と植栽環境に大きく左右されるため外観からの判定は困難ですが、移植後約140年経過していることから樹齢は150年生以上と推定されます。
早咲きの美しい桜ですが品種名が不明であったため、2001年に染郷 正孝氏(元東京農業大学教授)に調査を依頼し、花粉特性などからカンザクラ系の品種と判断され ‘ 蜂須賀桜 ’ と命名されました。命名後、原田家ゆかりの人々と地元有志が「蜂須賀桜と武家屋敷の会」を結成し、原木の保全と共に苗木の育成と植樹を進めており、ゆかりのある徳島城公園を始め県内各所に名所地が生まれています。また、同会は大阪府、奈良県、宮城県、バチカン市国など国内外に広く苗木を配布しています。なお、同会は2007年9月から特定非営利活動法人として活動して ‘ 蜂須賀桜 ’ の普及に努めてきましたが、特性に関する詳細な調査が未実施であったことから、当会の園芸品種認定に申請されました。
染郷氏は、‘ 蜂須賀桜 ’ をヤマザクラとカンヒザクラの雑種の一種であるカンザクラ系と判断されましたが、今回の調査結果でも、葉は無毛で成葉裏面が白色を帯びていること、花各部は無毛であることなどの形態的な特徴から同様の結果となりました。カンザクラ系の類似品種として、染郷氏が調査対象としたカンザクラと ‘ 大寒桜 ’ および当会の園芸品腫認定制度に基づき新品種に認定された ‘ 蓬莱桜 ’ と比較・検討しました。それらの品種とは、がく筒の形、がく裂片の形、花弁先端の切れ込み、樹形などで区別されることから新品種として認定しました。
江戸時代、この桜は門外不出として限られた人しか見られないため「お留桜」と呼ばれていたともいわれ、徳島藩主に大切にされていた歴史的な価値を持つ桜です。また、赤茶色の新芽と淡紅色の花が同時に開くため色彩の対比が美しいこと、開花期が徳島市では2月中旬より開花し、開花盛期は3月上中旬と開花期間が長いこと、カンザクラや ‘ 河津桜 ’ が寒さで花が傷む地域でも綺麗に開花する早咲き品種であることなど、観賞性や栽培特性に優れた品種です。蜂須賀桜と武家屋敷の会により地域の活性化に貢献する桜として広く活用されていますが、今後も原木の保全と共に活動が継続・発展することが期待されます。
なお、‘ 蜂須賀桜 ’ の品種名は同会により、登録4861107(31類・桜の木、桜のドライフラワー、桜の花、桜の苗木、桜の盆栽)および登録5645116(33類・日本酒、洋酒、果実酒、酎ハイ、薬味酒)として商標登録されています。

(認定番号 第027号) ‘ 吉祥おとめ桜(キッショウオトメザクラ)’ Cerasus sargentii ‘Kissho-otomezakura’

桜
品種特性詳細
2020年10月1日認定。 申請者 富山日本花の会
この桜は、富山県中新川郡立山町在住の佐伯 志津子氏(富山日本花の会代表)が自宅周辺の山林や公園などで採取したオオヤマザクラの種子を2003年春に播種し、発芽後、開花した複数の実生苗の中から観賞性に優れた個体を選抜し、自宅庭で育成してきた個体です。樹勢は旺盛で、樹の大きさは樹高約7.0m、枝張り約4.0m、地際の幹周は約0.5mにもなります。
実生由来の個体は他種の桜との雑種の場合もありますが、この桜は鱗片の粘性が非常に高く、成葉裏面が白色を帯びる、花序は散形状で花柄がごく短い、葉や花各部が無毛など、形態的な特徴からオオヤマザクラそのものと判断されます。
オオヤマザクラは本州、四国、北海道に分布する野生種の桜で、花色からベニヤマザクラ、北海道に自生が多いことからエゾヤマザクラとも呼ばれています。この桜は耐寒性が強いので、北日本を中心に観賞用緑化樹として広く植栽されていますが、種内変異があるため、樹形、開花時期、花色、花の大きさなどが異なる様々な個体が混在しています。 ‘ 染井吉野 ’ などの園芸品種は、同じ開花特性の苗木が生産されているため、計画にあった品種を選択することが可能ですが、オオヤマザクラでは樹形や開花期などを目的とした同一個体の入手は困難なことから、街路樹や公園での景観デザインに沿った利用を図るためには個体選抜による園芸品種が求められています。
今回、認定した個体はオオヤマザクラの一系統ですが、花は大輪で花弁の重なりが厚く、紅色の蕾と淡紅色の花弁や赤茶色の新芽の組み合わせが美しく観賞性が高いことから寒冷地域での桜の名所づくりに貢献すると期待されます。
品種名は、富山日本花の会により、100品種以上の桜が植栽・保存されている富山県森林研究所樹木園で様々なことを学んだことから、所在地である立山町吉峰より「吉」、桜に関わった仲間たちに幸せが訪れるようにと「祥」、さらに開花時の花の雰囲気から ‘ 吉祥おとめ桜 ’ と命名されました。

(認定番号 第026号) ‘ 小令和桜(ショウレイワザクラ)’ Cerasus ‘Shoreiwa-zakura’

桜
品種特性詳細
2020年8月11日認定。 申請者 宮城県農業高等学校
この桜は尾形 政幸氏が2008年4月に宮城県大河原町の柴田農林高等学校で栽培していたオオミネザクラを母親として、校庭の ‘ 染井吉野 ’ を交配して育成した品種です。
オオミネザクラは、オオヤマザクラとオクチョウジザクラとの自然雑種と推定され、宮城県七ケ宿町湯原地区で発見された県内唯一の個体が母親として用いられました。
また、 ‘ 染井吉野 ’ は桜の代表品種で、エドヒガンとオオシマザクラが関係したと推定されています。
今回の組合せによる既存品種は知られていません。類似品種として、交配に用いられたオオミネザクラ、 ‘ 染井吉野 ’ 、 ‘ 染井吉野 ’ とチョウジザクラの自然雑種である ‘ 茂庭桜 ’ などとは、がく筒の形が明らかに異なることから新品種として認定しました。
品種名は、2019年4月に開催された「おおがわら桜まつり」の期間中、JR大河原駅前でこの桜を展示・紹介した際に名前を募集しました。樹全体や花が小輪であることから「小」、2019年5月に平成から令和に改元されることから、新しい時代を彩る桜になることを祈願して ‘ 小令和桜 ’ と命名されました。

(認定番号 第025号) ‘ 玉夢桜(タマユメザクラ)’ Cerasus ‘Tamayumezakura’

桜
品種特性詳細
2020年8月11日認定。 
申請者 玉浦西まちづくり住民協議会、宮城県農業高等学校
宮城県在住の尾形政幸氏が、オオシマザクラを母親として、塩竃市内の塩竈神社境内に植栽されている ‘ 手弱女(たおやめ) ’ を人工交配して育成した品種です。 
オオシマザクラの関係する品種は多数あるため、類似品種と比較・検討しました。交配に用いられた ‘ 手弱女 ’ とはがく筒の形状、花弁の形、苞の形により区別され、 ‘ 祇王寺祇女桜(ぎおうじぎじょざくら) ’ とは花弁や苞の形により区別されることから、新しい園芸品種として認定しました。
この桜は、尾形氏が東日本大震災で被災した名取市内の宮城県農業高等学校に赴任した2012年4月に交配した品種で、2017年4月に初めて開花。その後、地域復興の一環として、同校の科学部プロジェクトチームの生徒達が苗木を増殖し育成してきました。
2019年4月、震災後の集団移転事業で整備された岩沼市玉浦西地区での大花見会に切枝を展示したところ、「地域の宝にしたい」と住民から苗木の寄贈を懇願されました。校内で検討した結果、地区名の「玉浦西」と花のイメージから「玉」、早期復興を成し遂げて自分達の夢や未来に思いを馳せて欲しいという願いを込めて「夢」を採用し、 ‘ 玉夢桜 ’ と命名。
震災で居住が困難となった土地に復興を象徴するメモリアル公園として整備された「千年希望の丘」にある相野釜公園にて、2020年4月、 ‘ 玉夢桜 ’ を記念植樹しました。今後も、二野倉公園や玉浦西地区に植樹する予定で、名前のとおり復興のシンボルとして地域を彩る桜の名所づくりが広がると期待されます。

(認定番号 第024号) ‘ あわ紅桜(アワベニザクラ)’ Cerasus ‘Awabeni-zakura’

桜
品種特性詳細
2020年8月11日認定。 
申請者 光明山観音寺、宮城県農業高等学校
‘ 染井吉野 ’ より早咲きで紅花の品種を育成するため、尾形政幸氏が ‘ 河津桜 ’ を母親として、オオヤマザクラ(宮城県七ケ宿町・自生個体)を交配して育成した品種です。
‘ 河津桜 ’ はオオシマザクラとカンヒザクラが関係したと推定される早咲き品種で、オオヤマザクラは花色が紅色という特徴があり、この組み合わせによる既存品種は知られていません。
‘ 河津桜 ’ とは萌芽時の芽鱗の粘着性やがく片鋸歯の有無、オオヤマザクラとは苞の形により区別されます。
2008年4月に人工交配した品種で、2012年4月に初めて開花しました。同年、東日本大震災の津波で被災した宮城県農業高等学校に赴任した尾形氏は、科学部プロジェクトチームの生徒達と共に震災復興活動の一環として接木による苗木増殖などに取り組んできました。
2019年4月に北釜観音寺(宮城県名取市)からの要請で、同寺に苗木4本を提供。これを機に同寺の檀家に名前を募集し、花色から受けるイメージからこの名前がつけられました。5月には地域に縁のある桜として岩沼市千年希望の丘相野釜公園にも植樹。地域を彩る早咲き桜の名所づくりへの活用が期待されます。

(認定番号 第023号) ‘ 秋保足軽紅重(アキウアシガルベニガサネ)’ Cerasus sargentii ‘Akiu-ashigaru-benigasane’

桜
品種特性詳細
写真提供 髙階 道子氏
2020年7月15日認定。 申請者 野尻いぐする会
この桜は、宮城県仙台市太白区秋保町野尻地区の児童公園に古くからある老桜樹です。藩政時代、野尻地区の全集落22戸は、仙台藩の郡奉行支配の足軽として藩境警備を担っていました。現在、2戸の組頭居宅跡は、上の家、下の家と呼ばれ、約270年前に1本ずつ植えられたイチイと桜が現存しています。
今回は上の家の桜が認定されました。主幹が枯損して衰弱した時期もありましたが、2020年6月現在、主幹は地面より約1m上部で切断されているものの、基部の幅が約75cm、切断部の幅が49cmあり、枯損前は大木であったと推測されます。主幹基部からの樹高は約7mあり、目通り(地表より1.2m)周囲が56cmと43cmのひこばえ由来の二幹が成育し、見事な花を咲かせています。
東北地方の桜を調査研究している髙階道子氏(桜の名所づくりアドバイザー)が、この桜には重弁化した小花が混在することを発見し、新品種誕生の契機となりました。鱗片の粘性が非常に高く、成葉裏面が白色を帯び、花序は散形状で花柄がごく短く、葉や花各部が無毛であるなど、形態的な特徴から他種の桜との雑種ではなく、オオヤマザクラ(別名エゾヤマザクラ)そのものと判断されます。
オオヤマザクラで花弁数が少し重弁化した品種について、川崎哲也氏の著書「日本の桜」では、「盛岡ではヒトエヤエエゾヤマザクラと呼ばれるものが栽培されており」と記載されていますが詳細は不明です。上の家の個体は重弁花が混在し、下の家の個体はがく片に鋸歯がみられるなど、標準的なオオヤマザクラとは異なります。街道の目印にするため、周辺の山野に自生する個体の中から変異個体を探索して植栽した可能性も考えられます。
この桜は地域にゆかりのある場所にあり、一樹中に6~7個の重弁化した小花が混在し、花弁の重なりが厚く、花色が紅色で観賞性が高いことなどから新しい園芸品種として認定しました。 「秋保足軽紅重」の品種名は、古くからの地名、集落の歴史、紅色の花が重なるという特徴から、野尻いぐする会(代表:佐藤 幸記 氏)により命名されました。同会が運営する野尻交流カフェ「ばんどころ」は、県内外の人々との交流の場となっており、原木の保全や接木による苗木の育成・植樹活動など、地域のシンボルとしての活用が期待されます。

(認定番号 第022号) ‘ 備中天神桜(ビッチュウテンジンザクラ)’ Cerasus jamasakura ‘Bitchu-tenjinzakura’

桜
品種特性詳細
2020年3月10日認定。 申請者 風致園を守る会
この桜は岡山県高梁市備中町にある風致園に植栽されています。風致園は江戸時代の宝永5(1708)年頃に庄屋の赤木蔵忠が本宅の前庭として築造したもので、その頃に植樹されたと推定されることから樹齢は約300年以上といわれています。樹の大きさは、樹高8.0m、幹周2.4m、枝張は東西17m、南北11m。桜は様々な個体間で交雑して種子が作られ、その種子から育成された個体は全て異なる特性を保有しています。そうした個体のうち、人が何らかの価値を見出して固有名詞を与えたものが園芸品種です。今回の桜はヤマザクラの一個体で、形態的には他と区別される際だった形質がみられないものの、地域に縁のある場所で古くに植栽された由来をもつ古木であることや、赤芽白花で観賞性が高いことから新しい園芸品種として認定しました。品種名の ‘ 備中天神桜 ’ は、菅原道真公を祀る天神社が桜の植栽地にあること、明治時代以前の地名である「備中」を冠することで地域の活性化を図るシンボルにすることを目的に命名されました。今後は、風致園とともに原木の保全を図りながら、接木などにより苗木を育成して地域の桜の名所づくりに寄与することが期待されます。

(認定番号 第021号) ‘ 須崎乙女桜(スザキオトメザクラ)’ Cerasus ‘Suzaki-otomezakura’

桜
品種特性詳細
2020年2月4日認定。 申請者 須崎乙女桜の会
この桜は静岡県下田市須崎地区に原木があり、2005年頃に ‘ 河津桜 ’ の実生苗木を浅野榮一氏が購入して私有地に植樹した個体です。 ‘ 須崎乙女桜 ’ は ‘ 河津桜 ’ の自然交雑実生で、葉や花などの形態的特性などから、オオシマザクラとカンヒザクラの雑種と推定されている ‘ 河津桜 ’ にヤマザクラ系の個体が関係して生じた品種と推定されます。実生から育成された個体ですが、12月から開花する極早咲きの既存品種と特性を比較・検討したところ、農林水産省に品種登録された ‘ 河津正月 ’ とは花の開き方や雌ずいの数などが異なり、 ‘ 伊豆土肥 ’ とはがく筒や苞の形などで区別することができ、他に類似する既存品種がみられないことから新しい園芸品種として認定しました。極早咲きで、須坂地区では12月下旬から2月中旬にかけて長期間開花し、観賞性も高いことから、所有者の了承を得て2011年頃より地元住民が接木による苗木育成を図りました。2014年には「須崎乙女桜の会」を発足し、十数名の会員が苗木育成や地区内での植樹に取り組んでいます。この桜で名所づくりを進め、須崎地区の地域活性化に繋げていくことを目指しており、愛らしい花の様子から ‘ 須崎乙女桜 ’ と命名されました。

(認定番号 第020号) ‘ 大磯小桜(オオイソコザクラ)’ Cerasus spachiana var. spachiana ‘Oiso-kozakura’

桜
品種特性詳細
2020年2月1日認定。 申請者 大磯町
この桜は大磯町在住の齊藤廣昭氏の生家敷地内にある樹齢300年以上といわれるエドヒガンの一個体で、齊藤氏が接木などで育成した苗木が町内の運動公園などに多数植樹されています。原木は齊藤智昭氏(齊藤氏実兄)所有の福島県福島市の瀬上陣屋跡にあり、樹高約13m、樹幹1.8~1.9m、三本立ちの大木で樹勢は旺盛です。エドヒガンはてんぐ巣病に罹らず長命であるため、固有名詞がつけられた個体が各地に存在しています。その多くは花の特性よりも樹形、大きさ、樹齢、歴史的な由来、伝説などの付加価値があることで地域の資産として評価されています。この桜も花などの形態的特性に明確な区別性はみられませんが、当会では「人が何らかの価値を見出した個体を他と区別するために固有名詞を与えた桜」を園芸品種と定義しているため、推定樹齢が300年以上の古木であること、若木の頃から花着きが良く、大磯町での桜の名所づくりに貢献していることから新しい園芸品種として認定しました。開花時の様子が枝に絡みつくように密生して咲く「小さく可憐な花」であること、大磯町で大切に育てられてきた桜であること、苗木を育成してきた齊藤氏の「いつまでも地域に愛される桜になってもらいたい」との想いから ‘ 大磯小桜 ’ と命名されました。また、今回の申請に際しては、この桜の故郷である福島県が東日本大震災で甚大な被害を受け、未だ復興が道半ばの中、新たに園芸品種として認定されることが復興の一助になればという想いを込めています。

(認定番号 第019号) ‘ 今津紅寒桜(イマヅベニカンザクラ)’ Cerasus × kanzakura ‘Imadu-benikanzakura’

桜
品種特性詳細
2019年12月1日認定。 申請者 西宮市
この桜は兵庫県西宮市の大東公園に植栽されており、樹高5.5m、幹の目通り1.6m、枝張り7.0m以上、樹齢は約70年以上と推定されます。1961年に公園を整備した際、桜の保全を図った記録があり、公園が開設された1950年には既に同地に植栽されていたと推測されます。当初、桜の品種は ‘ 大寒桜 ’ と考えられていましたが、西宮市は花の特性などから既存品種とは異なる新しい品種として、2015年より西宮市植物生産研究センターでメリクロンによる苗木の増殖・育成に取り組んできましたが、増殖株も同様の特徴が確認されたため、今後、市内各所に植樹を行う予定です。この桜は葉や花などの形態的特性などから ‘ オオシマザクラ ’ と ‘ カンヒザクラ ’ が関係して生じたカンザクラ系の品種と推定されます。来歴が不明で、実生から育成されたことが明らかではないなど、過去に何らかの名称がつけられていた可能性が否定できないため、 ‘ 寒桜 ’ 、 ‘ 大寒桜 ’ など同じ系統の既存品種と比較・検討した結果、類似する既存品種がみられないことから新しい園芸品種と認定しました。西宮市では、この桜を市民公募により ‘ 今津紅寒桜 ’ と命名。西宮市オリジナルサクラとして市内各所に植栽し、早咲きの桜による名所づくりに活用して行く予定です。なお、品種名は灘の酒で有名な灘五郷の一つ、今津郷のある今津地域で永らく親しまれていた桜であること、開花時の花の様子などからこの名前が付けられました。

(認定番号 第018号) ‘ 勝浦雛桜(カツウラヒナザクラ)’ Cerasus ‘Katsuura-hinazakura’

桜
品種特性詳細
2019年11月1日認定。 申請者 勝浦雛桜の会
この桜は江戸時代から徳島県勝浦町中山地区の定作(じょうづくり)家で栽培されてきたといわれ、千葉大学・中村郁夫教授によるDNA解析の結果や形態的特性からエドヒガンを母親としてヤマザクラ系統の桜が関係して生じた品種と推定されます。類似する既存品種と比較すると、 ‘ アメリカ ’ とはがく筒の形や花柱が無毛である点などで区別され、地元で ‘ 阿波雅桜 ’ と名付けられた桜とは形態的特性が類似しているもののDNA解析により異なる系統であることが明らかにされたため、新しい園芸品種と認定しました。勝浦町は活性化と人形文化の保存伝承を目的に、1988年より全国から集めた雛人形を飾るイベントとして阿波勝浦・元祖ビッグひな祭りを開催していますが、この桜の花が雛人形のように愛らしいことから、勝浦雛桜の会により ‘ 勝浦雛桜 ’ と命名されました。花は一重咲、蕾は紅色、花色は淡紅色、展葉前に開花し、勝浦町では染井吉野より7~10日前に開花します。町内に植栽された個体にはてんぐ巣病の発生はなく、染井吉野の前に開花する美しい桜で、ひこばえの株分けにより容易に苗木を増殖できるため町内の各所に植えられています。 ‘ 阿波雅桜 ’ など類似品種があるため、 ‘ 勝浦雛桜 ’ の原木を保護するとともに、原木から増殖した系統を維持しながら桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第017号) ‘ たつご里桜(タツゴサトザクラ)’ Cerasus ‘Tatugo-satozakura’

桜
品種特性詳細
平成31年4月3日認定。 申請者 高萩市
この桜は、日本花の会結城農場の桜見本園に保存されているホクサイの実生選抜により育成された品種です。東日本大震災で被災後、再建された茨城県高萩市役所本庁舎の完成記念として当会より寄贈されました。実生から育成された無名品種であったため、茨城県北日本花の会により、この桜の花色が松岡地区の白壁を連想させることから、竜子山城の歴史を鑑み、「たつごの里」を始め、高萩市全体が桜の名所として響き渡ることを祈念して命名されました。花は一重八重咲、大輪で微淡紅色、花に香りがあり4月上中旬に開花します。染井吉野に続いて見頃となる品種です。なお、母親品種であるホクサイは日本では記録がありませんが、ヨーロッパで栽培されている品種で、葛飾北斎に因んで名前がつけられたともいわれており、大輪で淡紅色八重咲の花を咲かせます。

(認定番号 第016号) ‘ 夢萩桜(ユメハギザクラ)’ Cerasus ‘Yumehagi-zakura’

桜
品種特性詳細
平成31年4月3日認定。 申請者 高萩市
この桜は、日本花の会結城農場の桜見本園に保存されている奥州里桜の実生選抜により育成された品種です。東日本大震災で被災後、再建された茨城県高萩市役所本庁舎の完成記念として当会より寄贈されました。実生から育成された無名品種であったため、高萩市民からの公募により、「子どもたちの声が聞こえ、人が集う街へ。そのためにも、市民が、この高萩で夢を追い求められるように、その市民をずっと見守って欲しい、との思いを込めて」命名されました。花は八重咲、大輪、蕾は紅色で満開時には淡紅色になります。開花時期は4月中旬、高萩市における桜の観賞期間を延長する素材としての活用が期待されます。なお、母親品種である奥州里桜は、岩手県盛岡市内で栽培されている品種で、オオヤマザクラが関係したサトザクラ類と推定され、紅色八重咲の花を咲かせます。

(認定番号 第015号) ‘ 清明さくら(セイメイサクラ)’ Cerasus ‘Seimei-sakura’

桜
品種特性詳細
平成31年4月3日認定。 申請者 高萩市
この桜は、日本花の会結城農場の桜見本園に保存されている旭山の実生選抜により育成された品種です。東日本大震災で被災後、再建された茨城県高萩市役所本庁舎の完成記念として当会より寄贈されました。実生から育成された無名品種であったため、大部勝規高萩市長により「すべてのものが、すがすがしく明るい空気に満ちるさまをイメージして」命名されました。花は一重咲大輪、花色は淡紅色、染井吉野に続いて4月中旬に開花します。花には香りがあり、高萩市における桜の観賞期間を延長する素材としての活用が期待されます。なお、母親品種である旭山は半八重咲、淡紅色。古くから知られるサトザクラの矮性(わいせい)品種で鉢物として人気があります。

(認定番号 第014号) ‘ 蓬莱桜(ホウライザクラ)’ Cerasus × kanzakura ‘Horai’

蓬莱桜
品種特性詳細
写真提供 中村 裕三氏
平成30年10月8日認定。 申請者 防府市
この桜は山口県防府市立向島小学校(防府市大字向島775)の正面玄関前に植栽されている早咲きの品種で、1920年頃に卒業記念として植樹されたともいわれています。1935年頃の記録にこの桜の存在が確認できることから樹齢は約100年以上とされ、「防府市立向島の寒桜」として、2011年に山口県の天然記念物に指定されました。千葉大学・中村郁夫教授によるDNA解析の結果や形態的特性からヤマザクラとカンヒザクラが関係して生じた品種と推定されます。類似する既存品種との比較では、 ‘ 寒桜 ’ や ‘ 薩摩寒桜 ’ とは花弁やがく片の形、 ‘ 大寒桜 ’ とは花弁先端の切れ込みが少くないことなどで区別されることから新しい園芸品種と認定しました。蓬莱桜保存会が設立された際に、「一年に一度、この桜に逢いに来る、逢いに来てほしいとの思い」と、向島は「蓬莱島」と呼ばれていた時代があり、島中央の錦山はかって「蓬莱山」と呼ばれていたことから ‘ 蓬莱桜 ’ と命名されました。原木は樹高9m、幹周2.8m、枝張は最大約18m、樹形は健全で樹幹部の腐朽もみられないなど、樹齢、樹の大きさ、樹形からカンザクラ類の品種では日本一の個体といえます。花は一重咲、蕾は紅色、花色は淡紅色、展葉前に開花し、同小学校では3月上中旬に開花します。‘ 染井吉野 ’ の前に開花する早咲きの美しい桜で、原木以外にも増殖した苗木が学校周辺に植えられ、開花期には大勢の見学者が訪れます。原木を保護しつつ、さらなる桜の名所づくりが期待されます。

(認定番号 第013号) ‘ 思伊出桜(オモイデザクラ)’ Cerasus × subhirtella ‘Omoide-zakura’

思伊出桜
品種特性詳細
写真提供 森田 和市氏
平成30年6月18日認定。 申請者 森田 和市
1996年に長野県飯田市在住の森田和市氏が市内の公園に植栽されていた ‘ 思川 ’ の果実を約20粒採種し、種子に調整後、地中に保存し、翌年3月に播種したところ5本が成育して、3年後に初めて開花しました。その中から観賞性が高い一個体を選抜して、接木により苗木を増殖・育成し、特性を継続的に観察しました。原木と比較したところ特性が固定されていたため、新品種として母樹である ‘ 思川 ’ の「思」に「伊那谷から出た桜」として‘ 思伊出桜(オモイデザクラ)’と命名した桜です。原木は20年生で幹周85cm(地上1.1m)、樹高6mに達しています。森田氏が自宅で増殖・育成した苗木は各地に送られています。また、当会桜見本園にも2007年にエドヒガン実生台に接木・育成した個体が保存され、毎年、花を咲かせています。‘ 思伊出桜 ’ は葉や花各部の特性は母親である ‘ 思川 ’ に類似していますが、花弁数が15~21枚の八重咲・中輪花である点で ‘ 思川 ’ と区別されます。花色は ‘ 思川 ’ と同様に蕾は紅色で、開花時の花色は淡紅色、開花時期は彼岸桜系としてはやや遅く飯田市では ‘ 八重紅枝垂れ ’ や ‘ 舞姫 ’ と同時期の4月中旬、展葉期が開花後で多花性のため ‘ 思川 ’ 以上に高い観賞性をもつ品種であり、桜の名所づくりの素材として今後の活用が期待されることから当会の園芸品種として認定しました。

(認定番号 第012号) ‘ 極楽寺桜(ゴクラクジザクラ)’ Cerasus leveilleana ‘Gokurakuji’

極楽寺桜
品種特性詳細
平成30年5月25日認定。 申請者 極楽地 太一
1982年に極楽地氏が兵庫県芦屋市の芦屋川上流左岸の山中で発見し、1986年にその個体から接木増殖し栽培している桜です。同氏より2001年に品種調査の依頼を受け、当会桜専門委員である故・川崎哲也氏により今までに知られていないカスミザクラの菊咲き品種と判断されました。当会による調査の結果、カスミザクラの菊咲品種として2004年の「花の友」春号に新しい桜品種として紹介されました。当時は当会の認定制度がなかったため、今回、特性などを再調査し、新品種として認定しました。カスミザクラ系の八重咲品種としては ‘ 奈良の八重桜 ’ が知られていますが、この品種と比べて花弁数が多く、時に段咲となる点や、がく筒や小花柄の毛の有無により区別され、黄緑色の若芽と淡紅色の花色の対比が美しい品種です。品種名は芦屋の岩ケ平山中にあった極楽寺の庵に因んで名づけられました。花は花弁数が約50~100枚の菊咲で、ときに段咲となり、蕾は紅色、開花時の色は淡紅色。芦屋市での開花時期は4月下旬、遅咲きの菊咲品種として桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第011号) ‘ 明徳慈眼桜(ミョウトクジゲンザクラ)’ Cerasus × subhirtella ‘Myoutoku-jigenzakura’

明徳慈眼桜
品種特性詳細
平成30年4月29日認定。 申請者 高顕寺住職 増澤 秀譽
この桜は高顕寺(長野県須坂市大字仁礼字大狭869‐2番地)の境内に古くから植栽されており、マメザクラの一品種であるミドリザクラと呼ばれていましたが、2015年7月に田中秀明(当会結城農場長)によりコヒガン系の品種と同定されました。その後の調査により、類似品種のミドリザクラとは葉縁鋸歯やがく筒の形で、ミドリコヒガンとはがく筒の色で区別されることから新品種として認定しました。なお、ミドリコヒガンは記載のみで現存する個体の所在は不明となっているため詳細な比較・検討はできませんでした。この桜の園芸品種名については、原木の所有者である高顕寺住職・増澤 秀譽(マスザワ シュウヨ)氏により ‘ 明徳慈眼桜(ミョウトクジゲンザクラ)’ と命名されました。名前の由来は原木のある高顕寺の山号である「明徳山」と院号の「慈眼院」に因みます。なお、明徳は南北朝時代、北朝の後小松天皇朝の年号、慈眼は仏教用語で慈悲の心をもって衆生(生命あるものすべて。特に人間をいう。)をみる仏・菩薩の眼を指しています。花は一重咲、蕾や花色は純白色、がく筒や新芽は淡紅緑色、展葉より前に開花し、同寺ではエドヒガンと同じ4月中旬に開花します。‘ 染井吉野 ’の前に開花する低木性の美しい桜で、鉢植えや切り花用および小庭園にも適する品種であり、桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第010号) ‘ 横輪桜(ヨコワザクラ)’ Cerasus ‘Yokowa’

横輪桜
品種特性詳細
平成30年3月1日認定。 申請者 横輪町活性化委員会
この桜は江戸時代後期から三重県伊勢市横輪町内の桂林寺にあったとされる桜で、ひこばえ等から増殖した苗が町内各所に多数、植栽され、開花時期には桜まつりが開催されています。地区に因んで ‘ 横輪桜 ’ と呼ばれていましたが、品種名が不明確だったため、申請者からの依頼により2011年に調査を実施、新品種として報告しました。当時は当会の認定制度がなかったため、今回、申請に基づいて新品種として認定しました。この桜はサトザクラ類の品種で類似品種である ‘ 千里香 ’、‘ 大提灯 ’ とは葉縁鋸歯や苞の形で区別されます。約5~14個の花弁が混在する一重八重咲、大輪、淡紅色で香りのある花を咲かせます。横輪町での開花時期は4月上旬、‘ 染井吉野 ’ 後に開花する美しい桜で、地域の活性化に大きく貢献しています。

(認定番号 第009号) ‘ 与謝野晶子(ヨサノアキコ)’ Cerasus ‘Yosano Akiko’

与謝野晶子
品種特性詳細
平成30年2月20日認定。 申請者 堺市
この桜は、堺市の大仙公園圃場で栽培されている桜で、ベルギーのカラムタウト樹木園から導入された品種です。本品種は葉や花などの形態的特性などからマメザクラに他種が関係して生じた品種と推定されます。類似品種のオカメとはがく片の鋸歯や花色、花弁の形状により、クルサルとは葉や花の毛の有無により区別されることから新しい園芸品種として認定しました。樹形が盃状で低木性であることから個人邸や小庭園など限られた空間での利用や鉢植えなどにも適する品種で、花弁の色は淡紅色の濃淡でぼかし状、がく筒およびがく裂片は濃紅色で花は小輪、多花性のため開花時期は花弁とがくの色が混在した高い観賞性をもつ品種で、堺市では3月下旬に開花します。品種名は、日本の近代文学を代表する歌人として堺市が生んだ歌人である与謝野晶子の名を使用し、まさしく ‘ 与謝野晶子 ’ と命名されました。与謝野晶子は生前、桜をこよなく愛し、桜を謳った短歌も多数残されています。晶子の最後の詩集は「白桜集」と名付けられるなど、晶子と桜は密接な繋がりがあります。また、与謝野家の家紋も桜をかたどったものであり、この桜の花びらと形状が類似しています。がく筒が濃紅色なことも、情熱的な女性歌人のイメージ通りであり、今後、桜名所づくりの素材としての幅広い活用が期待されます。

(認定番号 第008号) ‘ 天賜香(テンシコウ)’ Cerasus jamasakura ‘Tenshikou’

天賜香
品種特性詳細
平成30年2月15日認定。 申請者 極楽地 太一
この桜は極楽地氏が保全していた兵庫県芦屋市北東の東六甲山系の里山で、1978年頃に発見、その個体から苗木を接木増殖し、栽培した桜です。同氏より2004年に品種調査の依頼を受け、当会で調査の結果、ヤマザクラ系の新しい八重咲品種として同年10月に当会会報誌で紹介されました。当時は当会の認定制度がなく、今回、申請に基づき認定しました。花色が純白色で香りが非常に良いことから、天から賜った香り桜として、極楽地氏により‘ 天賜香 ’と命名されました。ヤマザクラ系の品種で八重咲・白花としては ‘ 琴平 ’ や ‘ 養老桜 ’ がありますが、がく片の形や花の香りの有無で区別されます。若芽の色は赤茶色で、純白の花色との対比が上品で美しい桜です。開花終期は花の中心部より紅色に変化します。芦屋市での開花時期は4月上旬。六甲山系で誕生した香り桜として、桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第007号) ‘ 弘前雪明かり(ヒロサキユキアカリ)’ Cerasus ‘Hirosaki-yukiakari’

弘前雪明かり
品種特性詳細
平成29年11月15日認定。 申請者 弘前市
この桜は1980年頃に市民から寄贈されて弘前公園に植栽したもので、1989年に当会主催の桜シンポジウムにおいて新品種と指摘され、岩手県盛岡市の育種家、橋本昌幸氏により、満開時の花色に因んで ‘ 弘前雪明かり ’ と命名されました。花は八重咲、蕾は紅色、開花と共に淡紅色に紅色の覆輪状となり、やがて満開時には白色になります。花には芳香があり、弘前市では5月上旬に開花します。‘ 染井吉野 ’ 後に開花する美しい八重桜なので、弘前市における桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第006号) ‘ 森小町(モリコマチ)’ Cerasus ‘Morikomachi’

森小町
品種特性詳細
写真提供 吉田 正之氏
平成29年6月30日認定。 申請者 北海道森町
‘ 森小町 ’ は、1978年に北海道茅部郡森町在住の故・田中 淳(タナカ マコト)氏が森町固有品種である‘ 堀井緋桜 ’を母親として、‘ 染井吉野 ’ を人工交配して誕生した品種とされています。1978年に播種後、育成された苗木は1987年に青葉ケ丘公園に移植され、1988年に公募により ‘ 森小町 ’ と命名されました。原木は2014年6月に枯死しましたが、当会結城農場で栽培されていた個体が2015年10月に青葉ケ丘公園に植栽されました。‘ 森小町 ’ は、開花時期が ‘ 染井吉野 ’ 後に見頃となること、蕾が濃紅色、花色は花弁に濃淡の紅色がぼかし状となり美しいこと、花着きがよく、葉に先立って開花するなど観賞性が高いことから、桜の名所づくりに活用されることが期待されます。

(認定番号 第004号) ‘ ひたち雅(ヒタチミヤビ)’ Cerasus ‘Hitachi Miyabi’

ひたち雅
品種特性詳細
平成29年3月1日認定。 申請者 日立市
‘ ひたち雅 ’ は、日本花の会桜見本園において田中秀明結城農場長により、‘ 松前八重寿 ’ の実生から育成された品種です。日立市の「池の川さくらアリーナ」開館記念として寄贈され、市民運動公園に植樹されました。市民公募により斉藤道代氏の「優美で華やかな品位を感じさせる花のイメージをもとに日立市を象徴するもの」として命名されました。花は八重咲で明るい淡紫ピンク色、花着きがよく4月上中旬に開花します。花にはわずかな芳香があり、‘ 染井吉野 ’ に続いて見頃となる桜として、今後の活用が期待されます。

(認定番号 第003号) ‘ 加計桜(カケザクラ)’ Cerasus ‘Kake’

加計桜   00046
品種特性詳細
平成27年11月2日認定。 申請者 加計 正弘 氏
‘ 加計桜 ’ は広島県安芸太田町加計の加計正弘氏邸で明治時代から栽培されている桜で樹齢100年生以上と推定されます。葉や花の形態的特徴からヤマザクラとカスミザクラが関係して生じた桜と推定され、地域を代表する桜として ‘ 加計桜 ’ と命名されました。花は八重咲で明るいピンク色、花には芳香があります。花着きがよく現地では4月中下旬、広島市内では4月中旬頃に開花します。‘ 染井吉野 ’ が盛りを過ぎた後に開花するため、遅咲きの桜の名所として活用されることが期待されます。

(認定番号 第002号) ‘ 掛川桜(カケガワザクラ)’ Cerasus ‘Kakegawa’

写真:(認定番号 第2号) 掛川桜 カケガワザクラ Cerasus ‘Kakegawa’
品種特性詳細
平成26年10月2日認定。 申請者 掛川市
‘ 掛川桜 ’ は静岡県掛川市で田旗康二氏により育成されたカンヒザクラ系統の品種で、掛川城の南側を流れる逆川沿いの両岸、 約2㎞に渡り約230本が植えられています。 ‘ 掛川桜 ’ の名は平成24年に掛川市緑化推進委員会により、これから市を代表する桜として命名されました。 花は一重咲で明るいピンク色、花着きがよく、3月上旬から開花し、観賞期間が2週間程度とやや長い品種です。 ‘ 染井吉野 ’ の前にお花見ができるため、掛川城を彩る新しい桜名所地となり始めています。

(認定番号 第001号) ‘ 華加賀美(ハナカガミ)’ Cerasus ‘Hanakagami’

写真:(認定番号 第1号) 華加賀美 ハナカガミ Cerasus ‘Hanakagami’
品種特性詳細
平成25年4月1日認定。 申請者 こまつ日本花の会
‘ 華加賀美 ’ は、当会桜見本園内に植えられた ‘ 奥州里桜 ’ の実生苗から田中秀明農場長が育成・選抜した桜で、 平成25年4月に「全国さくらシンポジウムin小松」開催を記念して命名・発表されました。 品種名は、こまつ日本花の会が「華やかで美しい加賀の國」にふさわしいとして選びました。 花は半八重咲で明るいピンク色、花着きがよい品種で4月上中旬に開花します。 命名を機に結城農場で苗木が生産され、石川県小松市を始め、各地に植えられ始めています。