公益財団法人日本花の会

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桜の名所づくり

サクラの枝にできる“こぶ”

近所に枝に“こぶ”ができているサクラはありませんか?

サクラの枝に“こぶ”をつくる病気はオオヤマザクラで多く観察され、これまでは寒冷地に特有の病気と認識されていました。ところが、最近 ‘染井吉野’ や温暖な地域のヤマザクラの枝にも “こぶ”が形成されているのがみられるようになりました。
これらの中には、“こぶ”より先の部分が枯れてしまっているものも確認されています。 枝に“こぶ”が形成されても、すぐに枯れてしまうことはないようですが、 数年後には枝が枯れてしまうことが予測されます。
また、“こぶ”のつき方を観察していると、“こぶ”が樹木全体に拡がり、 周辺のサクラにも伝染している可能性がうかがえます。“こぶ”についてはまだ感染経路、“こぶ”の形成過程、伝染方法など不明な点が多いのが現状です。

‘染井吉野’ の枝に見られる“こぶ”

  • 写真:枝についた“こぶ”①
    枝についた“こぶ”①
  • 写真:枝についた“こぶ”②
    枝についた“こぶ”②
  • 写真:枯れ落ちた枝
    枯れ落ちた枝

サクラの枝に“こぶ”をつくる病気”

サクラの枝に“こぶ”をつくる病気として、これまでに2つの病気が報告されています。

  • サクラこぶ病
  • サクラがんしゅ病

‘染井吉野’ にできる“こぶ”がこれらの病気によるものなのか、新しい病気によるものかはまだ明らかになっていません。
しかし、枝が枯れることが予測され、伝染する可能性もあるので、サクラを保全するためには早期の対策が望まれます。

サクラこぶ病

写真:明治神宮外苑

病原菌:Pseudomonas syringae pv. cerasicola
バクテリアの一種。 Pseudomonas syringae は広葉樹に“こぶ”を形成する病原菌として知られ、特定の樹種にのみ病原性を示すいくつかの病原型を有します。サクラに病原性を示す病原型は、特にヤマザクラ系のサクラに強い病原性を示すとされています。

サクラがんしゅ病

写真:明治神宮外苑

病原菌:Nectria galligena
子のう菌類に属する糸状菌、カビの一種。サクラのほかにも多くの樹木に病原性を示す多犯性の菌です。春から秋にかけて分生子は雨の飛沫とともに飛散したり昆虫の体に付着して伝播し、子のう胞子は降雨後に放出・飛散して風媒伝播を行います。これらの胞子は葉柄痕や傷口から侵入して発病に至るとされています。※

※参考:原色 庭木・花木の病害虫 農文協

対応策

現状では薬剤等による防除法は確立されていません。
しかし、そのまま放置しておくと病原菌の感染源となる可能性もあるので、“こぶ”が形成されている枝は、枝のつけ根からの除去が必要です。
処理の際、サクラは切口から腐朽菌等に侵されやすいため、切口は防菌剤や治癒促進剤等での処理を欠かさないでください。