全国花のまちづくりコンクール

第28回(2022年)全国花のまちづくり姫路大会

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テーマ 『人と花・緑がめぐりあう城下町 ひ・め・じ』

5月21日・22日、兵庫県姫路市で「全国花のまちづくり姫路大会」が開催されました。花のまちづくりを全国各地に普及定着させるために開かれるこの大会は、今回で28回を数えます。
姫路市での事例発表と、過去に全国花のまちづくりコンクールで大賞を受賞した福岡県北九州市、静岡県三島市の事業をご紹介します。式典では、ガーデニングミュージアム花遊庭ヘッドガーデナーの天野 麻里絵さんによる特別講演も行われました。

【YouTube ひめじ動画チャンネル】全国花のまちづくり姫路大会

事例発表

兵庫県立大学名誉教授
熊谷 哲(姫路市)《第26回農林水産大臣賞》

「特別な桜とまちづくり」
手柄山温室植物園入口に咲く〈手柄ザクラ〉
(写真提供:熊谷 哲)

妻と共に20年ほど前からオープンガーデンを始めました。2006年からは並行して自宅裏手の里山を再生させ、子供の遊び場や地域の人の憩いの場として活用できるように整備しています。自然を愛でる洋風のプライベートガーデン「熊谷ガーデン」と、里山を活かし、人を育てる「里山ガーデン」を広く一般に公開しています。2016年には全国花のまちづくりコンクールにて大賞(国土交通大臣賞)を受賞しました。両ガーデンのコンセプトは、1990年に大阪市で開催され、花のまちづくり運動の契機となった国際花と緑の博覧会の基本理念「自然と人との共生」です。ガーデニングは妻の担当、里山は私の担当で、さまざまな生き物たちが暮らす里山ガーデンでは、子供たちの自然体験を通した遊びを支援しています。「楽しかった!」という子供たちの声を聞くと非常に嬉しい気持ちになります。

また近くの空き地を整備し15種類の桜を植えました。手柄山中央公園には〈手柄ザクラ〉と名づけられた珍しい八重のカスミザクラがあり、昨年日本花の会の品種同定調査により新しい園芸品種と判明しました。地域の宝として姫路市、兵庫県全体に広く知られてほしいと思っています。〈手柄ザクラ〉を花のまちづくりに活かし、地元の子供たちに良さを知ってもらいたいと、『あげはくんとしらさぎくん』という絵本を作って読み聞かせに活用したり、シンガーソングライターの方に依頼してテーマソングを作成するなど、さまざまな活動を続けています。

ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会会長
上田 倫範(姫路市)

「姫路市蝶のジャコウアゲハが飛び交う街を夢みて」

姫路市の蝶ジャコウアゲハと人々を繋げる活動をしています。人が近づいても逃げないジャコウアゲハで訪れる人をおもてなししたい、教育のお手伝いをしたい、ジャコウアゲハを広く知っていただきたいとの思いから協議会を立ち上げました。

姫路市の魅力は、まずシンボルである国宝の姫路城です。城には桐と揚羽蝶の瓦紋が多数使われています。次に溜池が多いこと。農家、溜池、田畑、山林が広がる里山一帯には豊かな生物層が見られます。そして1989年、市政100年を機にジャコウアゲハを姫路市の市蝶にしたことです。姫路城に揚羽蝶の瓦紋があることに加え、ジャコウアゲハの蛹の姿が姫路ゆかりの『播州皿屋敷』で知られるお菊さんが後ろ手に縛られた姿を彷彿させることから、幼虫は「お菊虫」とも呼ばれます。この幼虫はウマノスズクサというツル性植物しか食べないため、農作物に害を与えません。幼虫の餌となるウマノスズクサは近年姫路市内で自生地が減少しているため、姫路市の企業、団体、小学校などと連携し、自生地を増やす運動を展開しています。ジャコウアゲハは観察するのに非常に良い教材で、子供たちに自然を見つめる目を養ってもらいたいとジャコウアゲハ教室も開いています。ジャコウアゲハを有効活用することで姫路の人たちの豊かな暮らしに貢献し、おもてなしができるよう活動していきたいと思います。

  • 写真:ジャコウアゲハが飛び交う街姫路連絡協議会のパネル展示(写真提供:姫路市)
    ジャコウアゲハが飛び交う街
    姫路連絡協議会のパネル展示(写真提供:姫路市)
  • 写真:ウマノスズクサを食べるジャコウアゲハの幼虫
    ウマノスズクサを食べるジャコウアゲハの幼虫

福岡県北九州市《第17回国土交通大臣賞》

「北九州市の花のまちづくり」
福岡県北九州市のうえるっちゃ花壇
(写真提供:北九州市)

北九州市は日本有数の工業地帯を中心とし一時は公害の街として知られた時期もありましたが、現在は公害を克服し「世界の環境首都」を目指して、官民協働で花や緑のあるまちづくりを進めています。市内に残る自然環境の保全や緑の創出、良好な生活環境づくりを積極的に進めた結果、市街地においても花や緑が充実し、潤いと彩りが実感できる心地良い都市となりました。花のまちづくりにおいては多くの市民ボランティアが市民花壇を自主的に管理し、フラワーコーディネーター制度の創設など大都市におけるきめ細やかな取り組みが評価され、2007年、第17回全国花のまちづくりコンクールにて大賞(国土交通大臣賞)を受賞しました。

「花咲く街かどづくり事業」では、市民自らに管理していただく市民花壇、市の事業として中心市街地などに設置する公共花壇、市が場所を提供し企業や団体に植栽管理をお願いするパートナー花壇、企業・団体からの寄付を原資とするスポンサー花壇、一般公募のボランティアの方に除草など維持管理していただくうえるっちゃ花壇、水やり協力などの花壇サポーター、花のボランティアリーダーを養成・認定するフラワーコーディネーター制度を展開しています。

「花と緑の普及啓発事業」では、コンクールの開催、花新聞の発行、市花ヒマワリの普及啓発、ホームページにおける開花情報の提供、花と緑の情報発信・活動拠点となるグリーンエコハウスの整備を行っています。

地域の方々の力を引き出し、行政がバックアップする取り組みが活動継続のポイントと考えています。

静岡県三島市《第25回国土交通大臣賞》

「三島市の花のまちづくり」
市街中心地を立体花飾りが彩る三島市
(写真提供:三島市)

三島市では1980年、花のボランティア団体「三島花の会」の活動が始まりました。2011年には「ガーデンシティみしま」を市の重要施策として掲げ、市民参加による花のまちづくりを推進しています。水と緑、文化と歴史、景観など三島の財産に花を加え、誰もが住みたい・訪れたいと思え、地域の絆づくりにも繋がるまちづくりを目指しています。取り組みの主役はあくまで市民で、行政は市民が参加しやすい環境づくりに努めます。こうした活動が評価され、2015年には第25回全国花のまちづくりコンクールにて大賞(国土交通大臣賞)を受賞しました。

市街中心地の幹線道路沿いに設置した立体花飾りは市民や訪れた人にも好評をいただいています。公共花壇は自治体や学校事業者との協働で植え替え作業を行い、市内全域の地域花壇と企業花壇では多くの団体に協力いただいています。立体花飾りは植え替え、花がら摘み、草刈りなど維持管理作業が欠かせず、これらの作業を協働で行う「花サポーターみしま」が誕生しました。活動で使用する花苗の半分はみどり育苗センターで供給しています。

 ガーデンシティみしまの推進には市民の協力が欠かせず、皆さんが活動に参加しやすい環境づくりのため、各種講習会や団体同士が情報交換できる交流会などを行っています。コンクールや祭り、フェアなど、花のイベントも欠かせません。

花を見ると美しいと感じ、その共感からコミュニケーションが生まれ、仲間づくりやまちづくりに繋がります。綺麗なまちには人が集まり、地域経済が活性化し、都市の価値が高まるとの思いから、「ガーデンシティみしま」の取り組みを続けています。

現地見学会

大会翌日は「城周辺コース」「花緑コース」と題した現地見学会が行われました。


  • 城周辺コース
    (姫路城)

  • 花緑コース
    (手柄山温室植物園)

  • 花緑コース
    (花々が来訪者を包み込む熊谷ガーデン)