全国花のまちづくりコンクール

第29回(2023年)全国花のまちづくり浜松大会

写真:

テーマ 『日本の春は浜名湖から・・・』

5月27日・28日、静岡県浜松市で「全国花のまちづくり浜松大会」が開催されました。花のまちづくりを全国各地に普及定着させるために開かれるこの大会は、今回で29回を数えます。ここでは、「花と緑のまち」として知られる浜松市を中心に展開されている事例発表と、現地見学会の様子をご紹介します。なお式典では、イングリッシュガーデンデザイナーの吉谷桂子さんによる特別講演も行われました。

事例発表

天浜線 人と時代をつなぐ 花のリレー・プロジェクト《第33回農林水産大臣賞》
浜松いわた信用金庫
米澤 浩祐氏
天竜浜名湖鉄道
伊藤 文俊氏

「天浜線 人と時代をつなぐ 花のリレー・プロジェクト」
アナベルが咲く天浜線寸座駅
(写真提供:天浜線人と時代をつなぐ
花のリレー・プロジェクト)

天竜浜名湖鉄道・通称天浜線は、静岡県掛川市のJR東海道線掛川駅から湖西市の新所原駅まで全長67.7kmの地方鉄道です。第二次世界大戦中、沿岸部の東海道本線が爆撃された場合に備えて内陸部を通る迂回ルートとして作られました。現在は浜松市をはじめ6市町の自治体と民間企業の第三セクターとして運営されています。沿線一帯を花で活性化させようと、はままつフラワーパークの塚本こなみ先生にご助力を仰ぎ、浜松いわた信用金庫、はままつフラワーパーク、天竜浜名湖鉄道が三位一体となり2018年にプロジェクトがスタートしました。

大きな特徴は「アダプト・プログラム」の仕組みを導入したことです。アダプトとは「養子縁組」の意味で、住民や企業などの皆さんが植栽地をわが子のように愛情を持って継続的にお世話をする活動としたことから、地域貢献のためにと協力してくださる方々が増えました。植栽地は18カ所、スタート時は35団体だったアダプト団体は2023年現在131団体に上り、延べ833団体、8,737人の方々が、遠州名物の空っ風が吹く寒い日も、日差しの強い酷暑の日も雨の日も、本当にわが子を慈しむように一生懸命活動してくださっています。

ガーデンデザイナーの吉谷桂子先生にペレニアルガーデンのデザインをお願いした天竜二俣駅、ヤマブキが学生さんたちを迎える常葉大学前駅、ポピーがきれいな金指駅、地元高校の皆さんとアジサイとノリウツギを植えた二俣本町駅、塚本先生に石庭をデザインしていただきトキワマンサクを植えた新所原駅、白いアナベルが咲く寸座駅など植栽地ごとに特徴があり、塚本先生にはそれぞれの植栽地の風景、風土に合う植物を選定していただきました。

また地元高校の生徒さんが駅待合室のフラワーアレンジメントを手がけてくださったり、ボランティア団体やロータリークラブの方々が駅舎をきれいに塗り直してくださったりと、天浜線とともに駅舎もきれいにしなければという意識が芽生えるようになりました。

周りを幸せにする花の力と皆さんの善意をお借りして、これからも地域振興と観光振興のためにプロジェクトを続けてまいります。

浜松オープンガーデンの会
佐野 誉志照氏・恵美子氏(浜松市)《第32回優秀賞》

「浜松オープンガーデンの会の取り組み」
浜松オープンガーデンの会(佐野邸)

2004年に開催された「浜名湖花博」では、浜松市職員として準備段階から約10年間携わりました。その後、妻の希望でオープンガーデンを見学した際にガーデンルームを目にして、ぜひ自分も、と思い立ちます。家の建て替えを機にオープンガーデンの庭づくりに取り組み、2009年の夏花壇から自宅でオープンガーデンを始めました。今年で15年目です。200㎡の面積を12区ほどに分け、花木、宿根草、一年草など、コーナーごとに植栽しています。基本的に一年中オープンガーデンを開催しており、コロナの影響でだいぶ減りましたが、年間300人程度の方々をお迎えしています。全国花のまちづくりコンクールでは、昨年の第32回大会で三度目となる優秀賞をいただきました。

浜松市は花と緑のまちとして知られており、私たちも街なかや公共施設などの花壇の整備を行っています。地元可美の市民サービスセンターや協働センターの植え込み作業のほか、会員の高齢化に伴って種からの花づくりが困難になってきたことから、市に相談の上、私が10年間ボランティアで苗づくりと苗を提供する条件で温室を設置していただきました。春は約5,000ポット、秋は約7,000ポットの苗を作り、花と緑関連の団体や施設、小学校などに花苗の無償提供をしております。

地域の協働センターや文化センターでは寄せ植えや初級・上級向けの園芸講座を行うほか、夏休みには子ども向けの講座も実施しています。デイサービス事業を行う施設の一角でお正月に向けた寄せ植えセミナーを開催したところ好評で、8年目になりました。メンバーの中には100歳を超えた方が二人おり、100歳にして寄せ植えをされる姿に力をいただいています。

各地区の花の会や、オープンガーデンの会の課題は高齢化です。オープンガーデンの会ではお花が好きそうなお宅を訪問して参加を呼びかけています。地元の小学校では校舎の建て替えで面積が広くなった花壇を任されていますが、今後は多くの方に参加いただける学校応援隊のような組織を作りたいと考えています。

浜名湖ガーデンツーリズム推進会議会長
塚本 こなみ氏

「北アメイジングガーデン・浜名湖の取り組み」

浜松市では2004年に「浜名湖花博」が大盛況で開催され、2009年に「モザイカルチャー世界博」がはままつフラワーパーク内で、2014年には「浜名湖花博」10周年記念花博の開催、2015年からは浜名湖を中心とした「浜名湖花フェスタ」を継続開催中と、2004年を契機に多くの方がお花に目覚め、浜松は「花のまち」へと進化してきました。

そうした中で、世界からたくさんのお客様をお迎えするインバウンド対策として、日本の美しいガーデンを「ガーデンツーリズム」として国(国土交通省)が認定する制度が始まり、2019年に初認定された全国5カ所の中に、浜松・浜名湖と静岡県西部の7つの公園と庭園とで構成された「アメイジングガーデン・浜名湖」も選ばれました。

7カ所をご紹介します。はままつフラワーパークは、「世界一美しい桜とチューリップの庭園」をキャッチコピーに、私が得意とする藤や、美しく生まれ変わりつつあるバラ園も加えてお客様をお迎えしています。楽しい森の仲間たちの立体作品、モザイカルチャーもお楽しみいただけます。2004年「浜名湖花博」の会場として国内外からの多くのお客様に感動をもたらした浜名湖ガーデンパークも大変美しく、当時「モネの庭」として作られた庭は、現在「花の美術館」として素晴らしく整備されています。

大河ドラマ『おんな城主 直虎』の舞台となった龍潭寺は、小堀遠州作と伝わるサツキとツツジを中心とした美しい庭園です。浜松城公園は動物園の跡地に作られた日本庭園と、茶室の松韻亭も建物の佇まいが美しく、秋は庭園の紅葉を見ながらお茶を楽しんでいただけます。

可睡ゆりの園(袋井市)は日本有数のユリ園で、浜松市だけではなく広域で皆様をご案内しましょうということで「アメイジングガーデン・浜名湖」に加わっていただきました。美しい庄屋屋敷に咲き誇るハナショウブが長く親しまれてきた加茂荘花鳥園(掛川市)は、ハナショウブやアジサイの品種改良を数多く手がけています。そして1200年の歴史を持つ遠江国一宮小國神社(周智郡森町)は、静寂に包まれた心洗われる場所です。新緑も紅葉も大変美しく、また素晴らしいハナショウブは全て神職の方々が心を込めて育てていらっしゃいます。

ウィズコロナの時代となり、この7つの施設で構成された「アメイジングガーデン・浜名湖」が海外の皆様にも喜んでいただけるように、これからも取り組んでまいります。花を通して皆様と心が繋がり、平和な日々が続くことを願っています。

  • 写真:「はままつフラワーパークのスマイルガーデン
    「アメイジングガーデン・浜名湖」
    はままつフラワーパークのスマイルガーデン
  • 写真:浜名湖ガーデンパーク
    「アメイジングガーデン・浜名湖」
    浜名湖ガーデンパーク

現地見学会

大会翌日は「天竜浜名湖鉄道・天竜二俣駅」「ばらの都苑」「はままつフラワーパーク」「浜名湖ガーデンパーク」などを巡る現地見学会が行われました。


  • 天竜二俣駅のペレニアルガーデン

  • はままつフラワーパークのスマイルガーデン
    天竜二俣川駅と共にデザインを手がける
    吉谷 桂子氏の解説で見学

  • 花と緑が美しいはままつフラワーパーク