第30回(2024年)全国花のまちづくり小松大会
テーマ 『美しいは楽しい ひろがる小松』
5月25日・26日、石川県小松市で「全国花のまちづくり小松大会」が開催されました。花のまちづくりを全国各地に普及定着させるために毎年開かれるこの大会は、今回で30回を数えます。誌面では、小松市での事例発表、現地見学会の様子、大会を機に整備されたガーデン、花育花壇をご紹介します。なお式典では、恵庭花のまちづくり推進会議 内倉 真裕美氏による全国先進事例発表、庭師・俳優 村雨 辰剛氏によるスペシャルトークショーも行われました。
事例発表
NPO法人みどりのこまつスクスク会
「花育活動のご紹介」
「こまつの杜」は建設・鉱山機械メーカー「コマツ」の小松工場があった土地に2011年に誕生しました。園内は約7万5000㎡あり、南北に広がるげんき里山エリアでは、ホタルやカブトムシ、チョウの育成、田畑での食育や花育活動も実施しています。活動の運営やサポートをしているのは、地域に居住し、NPO法人みどりのこまつスクスク会に所属するボランティアスタッフです。
こまつの杜は、地域との共生、子どもたちの育成、定年世代の参画という活動目的を柱に運営され、2021年にはいしかわエコデザイン賞大賞を受賞しました。
2015年から小松市と日本花の会との協働でスタートしたのが、地元幼保園との花育活動です。日本花の会から講師を招き、子どもたちにお花を育てる楽しみを知ってもらう活動をしています。春の種まきでは子どもたちに種の形をよく見てもらい、植えた種の芽が顔を出す1カ月後に間引きをします。初夏には花壇づくり。ポットから花苗を取り出して植え付けをする時には、何も言われなくてもほとんどの子がそっと大事に扱います。秋には春に咲く花の種まきをし、年間で通算2回の活動をすることで、花を育てることを深く理解できるようになります。冬には育てたお花を使って缶バッジのコサージュを作り、卒園式で年長児が胸につけます。園児には毎回、お花を育てる時に必要な3つのものとして「太陽」「お水」そして?「愛情!」というクイズを出して、お花を大切にする気持ちを伝えています。
花育活動は新たな取り組みもスタートしており、親子での花育やたねダンゴ作りを実施しているほか、こまつの杜に新たに作られたナチュラルガーデンの植物観察会も計画しています。宿根草をメインに、自然景観に近い植栽を楽しめるガーデンで、種が付く様、枯れる様など、植物の様々な様子を観察していただくことで、採種や手入れの方法なども知ってもらい、より深く植物に関わる機会に繋がればと考えています。将来地域を担う子どもたちが花や緑に親しみ、育てる機会を通して優しさや美しさを感じる気持ちを育む大切さを伝えていきたいです。
西軽海町一丁目町内会
「歌舞伎のまち 小松へようこそ」
(写真提供:小松市)
私たちの町は小松駅から東へ車で10分、里山に囲まれた自然豊かな場所です。町の入口にある花壇は20年ほど前、花が大好きな人が、緑地帯の片隅にあるゴミ集積所の周りに花の鉢を並べ、集積所を利用する町民に花のおもてなしをしたことが始まりでした。仲間も鉢も増え、咲き誇る花は通りがかりの人たちに癒しを与えていました。
一昨年秋、花壇に隣接する歩道のバリアフリー化工事が終わると、花壇と歩道に段差が出来ていました。段差をなくしてもっと魅力的な花壇にしたいと皆で考え、町内の若者たちも力を貸してくれました。重機で段差を削って緑地帯をなだらかにし、日差しを遮っていた桜の枝は剪定し、杉の大木は伐採して明るく広い空間が生まれました。頑丈な石垣もでき、日当たりのいい花壇で花々が咲き誇っています。ブーゲンビリア、マンデビラ、石垣を覆い尽くすぺチュニア、タネから育てるマリーゴールド、サンパチェンスは春から晩秋まで咲き続けて本当にきれいです。星形のお花が愛おしくなるほどきれいなブルーとホワイトのカンパニュラは、今朝、インスタグラムを見て花壇を見に来たとおっしゃる男性が感動して写真を撮っておられ、嬉しくてたまりませんでした。
小松は夏の暑さが厳しいですが、小松の豊かな自然、歴史や文化を次の世代に引き継ぎ、花と笑顔のおもてなしのある住み続けたいまちを目指して、これからも頑張ります。
沖町町内会
「11年のあゆみ」
(写真提供:小松市)
小松市の中心部にある沖町交差点と沖町1号公園の2カ所で花壇づくりをしています。寄せ植えやハンギングバスケット教室を開催していた方と出会い、全国植樹祭を契機に小松市が花壇の開園を募っていたことから花壇づくりの活動を開始しました。2014年に花のまちづくり推進団体に登録し、今日に至ります。活動当初から小松市の花壇コンクールに応募し、金、銀、銅賞などを受賞しています。
花壇づくりの仲間集めには、玄関先にプランターが置いてある家の扉を一軒一軒ノックして声をかけました。かなりの確率でご協力いただき、皆さんのおかげで10年間続けられています。交差点の花壇では、花壇の後ろにあるガソリンスタンドの従業員さんにも水やり当番に入ってもらい、水やり用の水も提供していただいています。
花の管理には土づくり、肥料、水やり、花殻摘み、切り戻し作業があります。交差点で抜き取った宿根草や球根を公園花壇に植え、公園の片隅には堆肥箱を置いて、抜いた花や雑草を入れて土づくりをしています。水やりの日は、花殻摘みや草むしり、帰りがけには落ちているゴミを拾います。
80歳を超えても10年間ご夫婦で水やり当番に入っていただいている方や、最近入会してくださった若い方などの仲間たちに支えられ、11年目を迎えることができました。
現地見学会
式典は約540人、翌日の現地見学会は43人が参加しました。見学会では、2コースに分かれて「木場潟公園東園地」「那谷寺」「日用苔の里」「小松村田製作所バラガーデン」「FRaT老人ホームNOA」「小松運動公園バラ園」「ゆのくにの森」を巡り、花のまち小松の魅力に触れました。
小松村田製作所バラガーデン
FRaT老人ホームNOA
日用苔の里
(写真提供:石川県観光連盟)
ゆのくにの森 加賀の伝統工芸体験
小松運動公園バラ園
木場潟公園東園地 農業体験ハウス
大会記念ガーデンと花育花壇、今後の花のまちづくり
子ども達とのタネ取り体験会
小松大会実行委員会は、大会の記念シンボルとして、2023年11月にJR小松駅東口の「こまつの杜」に、宿根草を軸に100種類1,000株を植栽した「ナチュラルガーデン」(ガーデン面積180㎡、植栽面積60㎡)を新設しました。植物の四季の変化を学び楽しむことを目的に造られた、サステナブルなガーデンです。日本花の会は、ガーデンの設計監理を手掛けたほか、NPO法人みどりのこまつスクスク会による日常作業をサポートしています。
ほか2023年6月には、小松市来訪者へのおもてなしと同市が推進する花育活動の新たな活動地として、小松駅東口に9基の「おもてなし花育花壇」が誕生しました。日本花の会は、年2回の設計監理と子ども達との植え込み作業に講師として参加しています。
小松市では今後も「持続可能な花のまちづくり」を推進展開予定です。
2025年度の全国花のまちづくり地方大会は、静岡県牧之原市で開催を予定しています。
ナチュラルガーデン散策目的でご来園
花育花壇のテーマは「お花が育つのに大切な
3つのこと ー太陽・お水・愛情ー」
みどりのこまつスクスク会による管理作業