全国花のまちづくりコンクール

第27回(2017年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評

審査委員長   輿水   肇

今年はこのコンクールに全国から1,851件もの応募がありました。応募くださった皆さんには感謝申し上げます。また、各賞を受賞者された方々には、心よりおめでとうございます。

私は今年から審査委員長を務めることになりました。どうぞよろしくお願いします。審査を終え、今年も素晴らしい花のまちづくりの取り組みに出会えたことをとてもうれしく思っています。

花のまちづくりの活動内容と成果を評価

審査においては、活動場所で花が健全に育ちきれいに咲いていることを前提に、地域等で生じた課題や問題を、花や緑を介した活動を通じて乗り越えながらまちづくりに影響し、その成果が美しいまち並みの形成や地域文化の継承、自然の保全、コミュニティの発展等に見られたかどうかを評価しています。分かりやすく言い換えれば、花壇の出来栄えではなく、活動の内容とその成果を審査するコンクールということです。審査項目に「快適な生活環境づくり」や「活動状況」、「地域の活性化」があるのはそのためです。

各地で取り組まれている花のまちづくりは、活動している主体や規模、内容など千差万別です。従って現地審査で受審地の活動を見終えた後の第二次審査委員会では、各審査委員からは様々な評価や意見が出され、点数にすると拮抗することも多く、議論が伯仲する中で賞を決めるのは楽なことではありませんが、今年も4つの大賞受賞者を決めることができました。大賞にならなかった方々も、次回はより上の賞を目指して頑張ってください。期待しています。

大賞受賞者の特長

新地町立駒ケ嶺小学校は第22回に優秀賞を受賞していますが、この時よりもPTAや地域が学校と一体となって、学校の周辺に花壇を増やし活動を拡大させています。その結果、児童はより明るく活発になり、活動を向上させようとする意欲が見られます。小学校における花のまちづくりは、児童の心に地域への愛着や責任感、やさしさなどを醸成し、児童の人格形成にも好影響が見られます。それにも増して大人と一緒に活動することで、自分も地域の一員であるという自覚を芽生えさせます。このことは新たな花の社会性の発見にもなりました。

山崎久夫さんの花のまちづくりは個人の活動レベルを超えています。行政の事業としても容易にできるものではないレベルです。日本人は地域の自然の風景を縮めて日本庭園を造るような能力は高いといわれますが、山崎さんの風景づくり(春の四重奏)はこれとは逆で、残雪の山並みを背景に、花を使って大面積で素晴らしい風景を地域の方たちと一緒になって創り出しました。富山県らしい地域性に富んだチューリップ畑の風景に審査員一同が感動しました。

藤枝市のふじえだ花回廊は、60年前に結成された藤枝市花の会の市民活動が礎になっています。ふじえだ花回廊事業の優れている点は、市役所内の各部署で実施している関連事業を広域連携課が全て掌握し、横断的に関連付けられていることです。これによりそれぞれの事業主旨が市民に伝わりやすくなり、見事に市民活動として展開されています。

すみよいカルチャータウンをつくる会コミュニティガーデンふるるは、応募回数が今回で7回目です。7度目のチャレンジで大賞を受賞されました。何もなかった遊休地から兵庫県の協力を得て活動を始め、12年間にわたり粘り強くひとつひとつの活動を積み上げてこられた結果といえます。活動の仕組みと仕掛けが優れていて、誰もが取り組める花をテーマにして、幅広い年齢層の参加が得られるように活動が工夫されています。コミュニティガーデンの優れた事例といえ、今後全国的にも注目されることでしょう。

花のまちづくりの活動が成熟してきたこともあって、新たに評価すべき活動内容が見られるようになりました。そろそろ審査基準を見直さなくてはならない時期にきているようです。審査委員会においても課題を乗り越えながら、これからも審査を進めていきますので、よろしくお願いします。