全国花のまちづくりコンクール

第28回(2018年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評

審査委員長   輿水   肇

今年は全国から1,667件の応募がありました。応募くださった方にはお礼申し上げます。また、受賞された皆さんには、この度はおめでとうございます。心より祝福申し上げるとともに日々の花のまちづくり活動に敬服いたします。

花壇のまわりの景観にも気配りする

このコンクールは1990年に大阪市で開催された国際花と緑の博覧会(略称、「花博」)の理念「自然と人間との共生」を継承する事業として1991年に始まり、今年で28回目となりました。コンクールが始まった頃と今の花壇を見比べてみると、そこに植えられている花の種類がだいぶ変わってきています。当初はサルビアやマーリーゴールド、ベゴニア・センパフローレンスを主とした、色のはっきりした花壇が多かったように思います。2000年代に入りガーデニングブームが下火になり始めたころから、パステル調の色彩の花壇や一年草と多年草、バラなどの低木の花木類を組み合わせた、多様な色調の花や葉が織りなす花壇が主流となってきました。また、近年では気候の変化もあって、暑い夏を乗り越えられる花が増えてきています。インターネットを利用して最新の花壇づくりの情報を入手し、インスタ映えするような花壇も応募の中では散見されます。

気候の変化や活動の形態の変化があった場合は、花の種類や花壇の大きさを変えることで、ある程度はその状況に対応できますが、花壇の周辺にある目障りな広告や立て看板など、雑然とした景観への対応が遅れているように感じます。特にインスタ映えを狙った花壇は、カメラのフレーム内のことばかりに意識が集中してしまい、花壇の周囲の景物との調和がおろそかになっています。

このコンクールでは、花壇が周囲の景観と調和しているかが審査のポイントのひとつになっています。花壇のまわりにも気配りして、視野を花壇にだけ向けるのではなく、花壇が地域の景観に溶け込み、花が見栄えするようになっているか、もしそうなっていなければ、花壇の周辺も整理するような広い視野をもちながら活動しなければいけません。これには行政との連携が不可欠なので、行政とも対等で良好な関係を持ち続け、花やみどりできれいなまち並みを住民側から築けるよう取り組んでみてください。花壇の周りの雑然さが整理されれば、花壇は今以上に美しく花も生き生きとしてくることでしょう。

地域愛を育みボランティア精神が支える

さて、受賞者に目を向けてみると、活動の組織や人の属性、花壇づくりなどは異なるにもかかわらず、共通している面もあります。具体的には花のまちづくりに関わる人の地域をよくしていこうという強い地域愛と花への深い愛情が共通しています。

大賞受賞の長岡市立山本中学校は、地域の花のまちづくりを30年以上に亘って牽引しています。中学生の時から花を介して地域とともにあるという学校の伝統が、生徒たちには自ずと地域愛を目覚めさせています。まちづくり宮ノ下地区委員会は、農家組合が話し合いで米作の減反による休耕田を集約して17haものコスモス広苑を実現しています。耕作地に執着の強い農家の方が休耕田の集約化を図るということは、並大抵のことではありません。その原動力は地域を輝かせたいという地域愛がもとで、コスモスまつりに向けた住民の結束に結実しています。十文字環境美化を考える会は社会的な環境が変化して町が活力を失いかけ、住民も地域への意識が薄らいでいましたが、地域で協力して人が集まる場所に花壇をつくり、生き生きとした花を咲かせたことで、住民の心に再び地域愛と自信を灯しました。長池オアシス管理会は中世から米作の灌漑施設として活用し、大切に保全してきたため池の環境悪化を憂いて、改修を機に地域の宝として磨きをかけるべく、ハスを中心とした長池の保全活動を始めました。関係者の地域愛を長池に集中させることで活動が地域愛とともに伝播し、広まる仕組みが協働で築かれました。

地域愛は大賞受賞者に限らず、コンクールに応募のあったそれぞれの活動に見られますが、活動を支えるものは見返りを求めないボランティア精神です。地域愛とボランティア精神が花のまちづくりの中で徐々に育つことが、活動を発展させ質を高めさせ、いい成果が得られることにつながります。