全国花のまちづくりコンクール

第30回(2020年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評

審査委員長 齋藤  京子

 1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」を契機に、その基本理念「自然と人間との共生」を継承し、それを発展させるために、1991年から「全国花のまちづくりコンクール」が始まりました。 「花のまちづくり」は、人と花や緑が、また花をめぐる人と人とが互いに影響しあって、家庭や公共の場で、美的なセンスを磨き、花を介した交流を活発に行ない、生き生きとした美しく心地よい地域をつくっていくものです。今年その記念すべき30回目を迎えることができました。第30回全国花のまちづくりコンクールは、昨年を147点上回る1,690点の応募がありました。新型コロナウイルス感染症拡大という困難な状況の中、ご応募いただいたすべての皆様に心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。皆様が社会性のある花のまちづくり活動を長年続けておられますことに深く敬意を表します。そして、栄えある各賞を受賞されました皆様へ、誠におめでとうございます。更に、第30回を迎えることができたことは、この活動に長年取り組まれてきた多くの皆様、関係者・関係機関・団体などの方々のおかげであり心から感謝申し上げます。

アフターコロナの必須パートナーは、「花やみどりと仲間たち」

 年の初めには全く想定していなかった新型コロナウイルス感染症が瞬く間に日本中・世界中に拡大し、ついに4 月16日には全国に緊急事態宣言が出されました。人と人との接触を極力避け外出の自粛も求められました。そのような中、庭や散歩の道、公園、土手の草花など普段気づかなかった身近な花やみどりの日々の変化に触れることが、心身のリフレッシュになることを実感しました。皆様も今年 の花のまちづくり活動は、いろいろな困難に直面したことと思いますが、その一方で、身近な花やみどり、そして共に活動する仲間に励まされたことと思います。今回の自粛を全国民が経験したことで多くの方が青空の下で花やみどりに触れ、感染防止を図りながら人と人が交流することの大切さに気付いたことと確信します。まさにwith コロナで気が付いた「花やみどりと仲間たち」の重要性は、アフターコロナにおいても私たちの必須パートナーと言えるでしょう。

 全国花のまちづくりコンクールの審査方法も、感染症拡大の影響を受けて現地審査を変更しました。従来、第一次審査で大賞候補に選出された地区すべてに現地審査を実施していましたが、今回は、従来通りの現地審査、Webによる審査、書類審査の3パターンで行いました。初めての試みでもあり、審査対象の皆様には大変お手数をおかけしました。更に、大変残念なことですが、感染状況が見通せない中、表彰式及び優秀事例発表会の開催を中止することとなりました。そのため、報告書の充実や大賞受賞者の活動概要をHPに掲載しますので、花のまちづくり活動の発展に役立ててください。

大賞受賞者の注目すべき高く評価された取り組み

井上 善人氏は、所有するみかん園跡地4,000㎡を水仙の丘とすべく、ラッパ水仙を分球しながら丘全体に植栽。今では多くの方が訪れる花の名所となっています。その活動の思いは、淡路島を花で元気にしたいという一念で貫かれており、その活動に共鳴した人たちが「水仙の丘 貸花壇友の会」を創設し活動の輪が広がっています。

株式会社平井料理システム「仏生山の森」は、居酒屋やレストラン等を経営する会社が農業試験場跡地に作り上げた、宿根草を中心とするガーデンや農園とレストラン、カフェが一体的に構成された心地良い空間。農園の花や野菜を食材に用いて残渣は堆肥化してリサイクル。人材育成にも力を入れています。

市民協働「熊谷の力」小江川地区1000本桜事業は、里山地域の不法投棄防止や防犯、桜の名所づくりなどを目標に10年かけて1,000本の桜を植栽し、現在も植栽や管理を続けています。管理には機械の使用が不可欠等難しい作業もこなし、活動資金の確保やPR のためにイベントに参加するなど、活発な活動を展開し、郷土を守り育てています。

鈴木 良枝・勝義夫妻は、皆が花や緑を楽しむ中で心の和む場となるよう努めているとの言葉どおり、今年のコロナ禍でのオープンガーデンでは、来園者から「気持ちが晴れたね」という感想が多く寄せられたとのこと。非常に勉強熱心で、草花やバラなど四季を通して色の組み合せ、高低差、奥行きのあるデザイン等その美しさは目を見張るものがあります。

社会福祉法人浄英会 恵和こども園は、0歳児から5歳児までの園児304人の大規模なこども園で、「はっけん! ・はっけん! 」を合言葉に、年代ごとに創意工夫したカリキュラムの下、花育に取り組まれています。園児は、花や緑に触れ、気づき、感動する中で、思いやりや命の大切さを学び、地域の活動にも参加しています。このようなこども園の取り組みは、子ども達の考える力や協力し合う心など情操教育や科学的思考の醸成に資するものであります。

 以上、第30回を迎えた全国花のまちづくりコンクールの審査講評を終わります。今後とも楽しい花のまちづくり活動に取り組まれますとともに、新たなメンバーを交え活動が更に発展されますことを祈念いたします。誠にありがとうございました。