全国花のまちづくりコンクール

第31回(2021年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評

審査委員長 齋藤 京子

 今年の第31回全国花のまちづくりコンクールの総応募数は1,031点となり、昨年の応募数より659点減少しました。これは、2年も続くコロナ禍の影響があります。特に団体部門では、集合活動が実施できなかったこと等が大きく影響したと考えられます。一方、個人部門では22点増加しました。このように、感染防止を図りながら、多くの皆さまが花のまちづくり活動を全国各地で展開していただきました。応募者の中には、長年、応募し続けて下さっている方々がたくさんおられます。そこで、長年応募され入賞されている方々の継続的な花のまちづくり活動に対して敬意と感謝と更なる活動の発展を祈念して「特別賞」を設けることとしました。今回最初の特別賞が29件授与されます。入賞回数が5回以上の「シルバー賞」が26件、10回以上の「ゴールド賞」が3件です。
 栄えある各賞を受賞されました皆さまへ、心からお祝い申し上げます。そして、このコンクールに応募してくださいました全ての皆さまに、この場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。更に、コロナ禍の困難な活動を見守り支えていただいている関係者・関係機関・団体などの方々に心より感謝申し上げます。

手間をかけ思いも込めた「花や緑」が創る皆の笑顔・・・町にも村にも

 今年の応募書類から感じましたのは、「花のまちづくり」のフィールドの多様性です。例えば、個人ではマンションのベランダや自宅のガーデンに留まらず、活動を公共的な公園や道路沿いなどに仲間たちと拡げています。団体では、都会の真ん中の公園にハーブをメインに植栽・管理・運営しながら、苗を市民に配布するところもあれば、耕作放棄地に花壇を何か所も作り、人を集落に呼び込むことも意識して花づくりをしている地域や、耕作放棄地に花桃や桜などの花木を植えて活気が戻った里山もあります。このような中山間地域で目立ったのが、シカやイノシシ、カラスなどの被害を受けている実態です。害獣防止のため、花壇を柵で囲っている地域や植えた花苗を悉くカラスに抜かれた地域もありました。本当に大変な苦労と努力が伺えます。花のまちづくりに取り組まれている地域の多様性を感じます。しかし、共通するのは、毎週・毎月、花や緑の手入れをする日を決めて、1年を通して手間をかけ思いを込めて仲間と一緒に花や緑を育て、その輪を地域に広げていることです。花や緑をきっかけに会話が始まり地域づくりや多世代交流が始まった地域もあります。最近はSNSを活用して活動の輪を拡げているところもあります。高齢者施設でも学校でも個人のお庭の周りでも、花と緑の輪が日常に笑顔を誘っています。1991年から始まった「全国花のまちづくりコンクール」での受賞を活動の励みとしながら、これからも「花や緑」が創る皆の笑顔を広げていきましょう。

大賞受賞者の注目すべき高く評価された取り組み

楢原ゆうあい会は、耕作放棄地の増加により、獣害や不法投棄も増えた楢原地区を何とかしようと、高齢者を中心に花木の植栽、街道の花植えを進めた結果、見違えるような花と緑の美しい地区に蘇らせたことが高く評価できます。地域住民の理解と協力体制も整っており、困難に直面している全国の中山間地域を大いに力づけるものと期待されます。

宮野 裕子氏は、花の選定、土づくり、育成の丁寧さから自宅の花々は元気で美しく、栽培管理技術の高さが評価されました。農具や背負い籠を利用した立体感のある飾りつけなど、郷土愛が溢れた「ここにしかない庭づくり」を実践されているところも素晴らしいです。花を通じて多くの方々と交流し次世代への継承活動を行っていることも称賛に値します。

小松市は、市民、企業、学校、団体など幅広い組織が積極的、主体的に花と緑のまちづくりに取り組み、市内各地で花と緑の美しい街並みづくりが行われていることが高く評価されました。講習会の実施、SNSを活用した情報発信も魅力的です。このような住民参加型の花のまちづくり支援活動が多くの市町村のモデルとなることが期待されます。

ふかや緑の王国ボランティアは、深谷市の花と緑の拠点である「ふかや緑の王国」で、コンセプトの異なる19のガーデンを各コンセプトに共感したメンバーにより植栽や管理をしており、参加者の意欲と探求心を高める手法として高く評価できます。一方、園内全体の栽培管理は会員皆で行いとても良く手入れされおり、チームワークも素晴らしいものがあります。

みなべ町立高城小学校は、開校以来40年余り、「心の中に花一輪」を合言葉に、花を育てる活動や管理は主に低学年が行い、高学年は梅づくりと米作りの農業活動にも参画する等、全学年を通じて地域の特徴を活かした花と緑の活動を積極的に行っているところが高く評価されました。地域住民と学校との連携協力関係も素晴らしいものがあります。

 以上、第31回を迎えた全国花のまちづくりコンクールの審査講評を終わります。
 なお、大変残念ですが、新型コロナの感染状況が見通せないため、表彰式は中止となりました。そのため、報告書の充実や大賞受賞者の活動概要をHPに掲載しますので、皆さまの花のまちづくり活動に役立ていただければ幸いです。