全国花のまちづくりコンクール

第32回(2022年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評

審査委員長 齋藤 京子

 今年の第32回全国花のまちづくりコンクールの総応募数は694点となり、昨年より337点減少しました。コロナ禍の影響により、各自治体での花のまちづくりコンクールの中止や、特に団体部門の減少が大きいのは、一定人数での活動の難しさもあるかと思います。一方、学校部門は129点の応募があり、多くの子どもたちが花を育てることの楽しさを知ることは今後に大いに期待が持てます。
 今年から、応募用紙の記載方法を見直し、項目ごとに写真を添付するようにしました。従来と異なる書き方に戸惑われた方もおられたと思いますが、全体的には、活動内容とその考え方がわかりやすく書かれた応募書類となっておりました。ありがとうございました。
 この度、栄えある各賞を受賞されました皆さまへ、心からお祝い申し上げます。そして、このコンクールにつながる全ての皆さまに、この場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。更に、3年目となるコロナ禍での活動を見守り支えていただいている関係者・関係機関・団体などの方々に心より感謝申し上げます。

「花の持つ力」を活かして賑わいづくり…街角・公園・学校・山の中や島にも

 今年の応募書類と現地審査から感じましたのは、「花の持つ力」のすばらしさです。「花の持つ力」で逆境を一転させ、多くの人が訪れる潤いと癒しを感じる、賑わいのある場所に変えていました。駅前の殺風景な空き地、買い物するだけのコンビニ、単調な内容の公園、新設校で地域とのつながりが薄かった学校、山の中の耕作放棄地に森が迫り獣害も出る地域、戸数が減り存続が危ぶまれていた集落、不便な離島など、今の日本ではそういう状況が各地に見られます。ところが、「花のまちづくり」に取り組んだ結果、見事にそれらの逆境を、賑わいのある場所に変えていました。どのように変わったのかは、活動の概要をご覧ください。皆様の継続的な活動により、季節ごとに変化する花々や緑があり、集う場所が出来、一緒に活動する仲間がいることで、地域が変わってきていました。更に、例えば、潅水施設、花苗の提供、林地整備の重機レンタル、観光施設との連携、市民への広報など地方自治体、企業、NPO、一般市民など多くの方々の理解と協力がありました。引き続き、「花のまちづくり」を応援していただきたく思います。今回応募された皆さま、そして受賞された皆さま、是非、楽しく無理なく「花のまちづくり」活動を発展させていきましょう。

大賞受賞者の注目すべき高く評価された取り組み

鳥山 順子氏は、浅間山溶岩流が堆積し表層土壌が乏しい別荘地の土壌を、簡易な土壌改良法を開発して、自生種と栽培種が一体化した見事なガーデンを作り上げています。この手法は表土層の乏しい別荘地の新たな可能性を開くものです。また、鳥山氏は、浅間高原オープンガーデン協議会の主要メンバーとして活動する等地域活性化に大きく貢献し、別荘地での新たな花のまちづくり活動として高く評価されました。

水田 進氏は、限界集落の廃村か存続かの瀬戸際を、花のある風景にその最後の一手を託し集落を救った取り組みです。アジサイ、花桃などが集落の里山に映え、古民家を活かしビオトープを作り小水力発電にも取り組むなど、集落を丸ごと楽しみ、訪れる人たちが移住する動きも出るなど、水田氏の活発な活動が若い人たちを惹き付けています。水田氏の集落を舞台にした花を中心とした総合的な活動の広がりが高く評価されました。

髙島 孝子・直宏・千鶴氏らは、かつて小菊やキンセンカの生産が盛んだった志々島をまた花の島にしたいと高齢の母孝子さんが始めた花づくりを、息子の直宏さんと妻の千鶴さんも一緒に取り組み、2019年には本コンクールで優秀賞を受賞されました。これを契機に更に多くの観光客が訪れ、クラウドファンディングの活用など他分野の支援者も関わり、花づくりと島の活性化が好循環で発展し続けている素晴らしい取り組みとして高く評価されました。

野間大池公園花学校は、公園の花壇全体の9割以上を花木、宿根草、球根植物が占めるローメンテナンスなナチュラリステックガーデンが特徴で、夏場においても植物が活き活きとしており、このようなガーデンの構成は大いに参考になると評価されました。また、事業計画や作業予定表を作成しメンバーで共有していること、「大池公園はなだより」として広報していることも団体の部の活動手法として高く評価されました。

牧之原市立萩間小学校は、各学年1クラスずつの学校で約50年間継続して活動し「学校のじまん」として受け継がれています。メイン花壇は全校にデザイン募集をし、学年花壇は児童の自主性に任せているなど、児童全員が主体的に活動していることが特徴です。また、花壇の花を利用したウエルカムフラワー、写真コンテスト、住民への花束贈呈など花を楽しむ活動は、他校でも是非参考にしてほしいと思います。更に、学校の先生・児童・地域が非常にうまくつながっていることが他校の参考になると高く評価されました。

 以上、第32回を迎えた全国花のまちづくりコンクールの審査講評を終わります。
 なお、今年もコロナの感染状況が見通せないため、表彰式は中止となりました。そのため、報告書の充実や大賞受賞者の活動概要をHPに追って掲載しますので、皆さまの花のまちづくり活動に役立ていただければ幸いです。