第35回(2025年)全国花のまちづくりコンクール 審査講評
第35回全国花のまちづくりコンクールの総応募数は924件となり、昨年の605件より319件増加しました。自治体などからの協力も増え嬉しいです。コンクールを活動の記録や励みとするなど、気軽にご活用いただきたくお願いします。部門別には市町村6件、団体604件、学校201件、個人72件、企業41件でした。この度、栄えある各賞を受賞されました皆さまへ、心からお祝い申し上げます。そして、花のまちづくり活動に取り組むすべての皆さま及び日頃からこの活動を支えていただいている関係者・関係機関・団体などの方々に心より感謝申し上げます。
花と緑と皆の力で今後どうしていくのか
プランを練って着実に楽しく活動する『花のまちづくり』が展開されていました
花と緑の効用を地域の環境づくりやコミュニティづくりに活かす取り組みは、一朝一夕にはできません。先を見据えたプランを作り、花と緑があふれる気持ちの良いところにしたいとの想い・モチベーション・仲間・資金があってこそ実現し、継続できます。長く活動をされている市町村・団体・学校・個人の皆さまの取り組みは、素晴らしいものがあり、継続を支えるノウハウがそれぞれあります。入賞回数に応じた継続的な活動を特別に称える「特別賞」の受賞者が増えているのは嬉しい限りです。一方、クラウドファンディングによる活動の再興や、地域外の有志による活発なネットワーキング、マンション居住者による共有スペースの壁面緑化装飾活動など、状況の変化や居住環境に応じた活動も展開され、大変興味深く思います。また、年々厳しくなる酷暑を乗り切るために、水やりや栽培管理方法の工夫、一年草中心ではなく宿根草、花木、灌木、樹木を積極的に取り入れている事例が見られます。今後このような取り組みは益々重要になります。
全国花のまちづくりコンクールは、1990年に開催された国際花と緑の博覧会の基本理念「自然と人間との共生」を継承しています。2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会の理念にも共通する「花のまちづくり」活動を一層盛り上げていくために、多くの皆さまのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
大賞受賞者の注目すべき高く評価された取り組み
浦戸諸島「海と花の物語」は、2011年の東日本大震災後、全国から励ましの気持ちと共に花々の球根が届き、その花々で癒しと活力が育まれた体験のもとに結成された団体です。島民が減少した桂島を拠点に、島外のメンバーが島民と協力して花による景観づくりを進め、現在は約1,000㎡の敷地に約1万本の花々が美しいフォトスポットと共に訪れる人を楽しませています。活動者はメンバーのほか、大学生や国内外の来訪者など年間約200名にも広がり、創造性豊かな楽しい活動が展開されています。会の運営も、予定表の配布、ブログでの活動報告、総会を開催し報告・計画・予算を審議するなど、民主的になされており、人口減少地域での地域振興モデルとして、大変高く評価されました。
佐々木 裕哲氏は、1999年に自邸でアジサイの植栽を始め、2003年からオープンガーデン「あじさいの“恵紫園”」を通年開園しています。各種媒体で、関西あじさい名所11 選の一つとして紹介されるなど、同園は地域の観光資源として年々多くの人が訪れるようになり、昨年は4,000人以上の来訪者がありました。アジサイは、日本の在来種や園芸種など320種、1,200株を鉢や地植えで育てており、アジサイの盆栽仕立て、土壌の違いによる発色の様子など、技術を伝える交流も積極的にされています。佐々木氏との交流を通じて、地域では花壇づくりやオープンガーデンが広がるなど、その長年にわたる活動は花による地域の観光振興として、大変高く評価されました。
射水市は、富山県が花と緑の県づくりを進める推進母体として1973年に設立した「(公財)花と緑の銀行」の15支店の一つです。2005年に5市町村が合併し、現在の「射水支店(イコール射水市)」となりました。旧市町村の枠を越えた一体感を醸成する手段の一つとして、花のまちづくりに取り組んでいます。緑の基本計画の策定、花壇コンクールや市民の集いの主催、「地方銀行(市内小学校旧校下単位)」への花苗配布、活動費補助など、各種の支援を行っています。最大の特長は、長年にわたる「花と緑の銀行」のフレームを活かした、射水市の継続的で意欲的な物心両面の支援です。これらの支援が、各地域でポテンシャルの高い人材の育成と活動の継続に繋がっていることが、大変高く評価されました。
名塩さくら台景観緑化クラブは、居住する分譲住宅地の空き地や不法投棄が目立つ状況を憂いた住民有志が、2014年に「まちを美しく元気にしたい」との想いで立ち上げた団体です。遊歩道などを花木で美しい景観にするための計画は、綿密に練りあげられ、行政事業として採択実施されました。その後も栽培管理と景観向上に努め、新たな計画を着実に実現しています。現在、活動地は2,170㎡にわたり、周囲の自然林に馴染む木々や花木、宿根草等による植栽が、ローコスト・ローメンテナンスで美しく維持されています。景観に惹かれ居を構える方が増え、住民が朗らかに散策する姿も見られます。将来を見据えた計画を基に、理想像を着実に歩む同会の取り組みすべてが、大変高く評価されました。
伊奈町立小針北小学校は、バラのまちで知られる伊奈町にあり、児童が地域資源を活かして課題と解決策を考える学習活動として、2023年から6年生130人を中心に「バラ栽培プロジェクト」に取り組んでいます。自然循環を取り入れた土づくりをはじめ、各自が担当するバラを決め名前も付けて、慈しみながら120株以上を育てています。地域の方も訪れる同校のバラ祭りでは、活動紹介のほか、児童が制作したバラを用いたハーバリウムの販売なども行っています。収益は活動資金に充てられ、活動は6年生から5年生に引き継ぎ式を通じて引き継がれます。バラを核としたこの学習活動は、今までに例を見ない社会に開かれた画期的な活動として、大変高く評価されました。
以上、第35回を迎えた全国花のまちづくりコンクールの審査講評を終わります。
