桜の名所づくり
サクラ類てんぐ巣病から ‛染井吉野’ を守ろう
サクラてんぐ巣病はかびの一種(タフリナ菌)が原因でおこる伝染病です。全国に植えられ、お花見を楽しませてくれる ‛ 染井吉野 ’ はこの病気にとても罹りやすく、罹った枝を放置しておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。 ‛ 染井吉野 ’ は病気に弱く、寿命が短いといわれますが、その大きな原因がこの病気です。多くの地域で、この病気に罹った桜がそのまま放置されているため、これらが伝染源となって日本各地に被害が拡大しています。未来に向けて、 ‛ 染井吉野 ’ の花を楽しむためにも、蔓延しているサクラ類てんぐ巣病から ‛ 染井吉野 ’ を守って行きましょう。
1. サクラ類てんぐ巣病の特徴
サクラ類てんぐ巣病に罹った枝には花が咲かないため、健全な部分が開花している時に小さな緑の葉が開いてくるので、花時の見映えが非常に悪くなります。また、病気の枝は年々、多数の枝を発生しながら大きなかたまりとなり、病気が樹全体に広がると著しく衰弱し、数年後には枯れてしまいます。
伝染源となる胞子は、病気になった枝についた小さな葉の裏側につくられ、花が散り終わった頃から飛散し始めます。
胞子は、雨水や霧に混ざって広がるといわれています。この病気は、川沿いや湖の周辺、霧のかかりやすい場所など、空中湿度の高い場所、日当たりや風通しの悪い場所で多く発生しています。
また、植栽間隔が狭い場合、成育に伴って過密な条件になると発生が目立ってくる様です。サクラ類てんぐ巣病に罹ったまま放置しておくと、病原菌の密度が高まるため、樹全体に被害が広がるとともに、周辺の桜にも伝染してゆきます。このような桜を放置したまま近くに植栽すると、その苗木も感染し被害が拡大、蔓延します。
サクラ類てんぐ巣病に罹った ‛ 染井吉野 ’ の状況
- 写真左:サクラ類てんぐ巣病の枝(落葉期)、枝が細かく分かれている
- 写真中:サクラ類てんぐ巣病の枝(開花期)、花数が少なく新芽が伸びている
- 写真右:サクラ類てんぐ巣病の罹患木(枯死寸前)
2. サクラ類てんぐ巣病の防除対策
現在、最も効果的な防除方法は、病気に罹った枝を切除して伝染源を無くすことです。切除の時期は、病気の枝が見分け易いこと、胞子が飛散する前であること、剪定の適期であることなどから落葉期が適しています。切り口には保護剤を塗布しましょう。また、見落としやその後の発病などがあるので、2~3年は継続して行う必要があります。なお、切除と併せて肥料を施すことは、樹勢の回復に大いに役立ちます。
3. 新規植栽に当たっての留意点
‛ 染井吉野 ’ は、成長速度が早く大木となるので、植栽間隔が狭いとすぐに過密状態となってしまいます。そうなるとサクラ類てんぐ巣病が発生しやすくなるので、充分に間隔を空けて植えましょう。また、サクラ類てんぐ巣病に罹りにくい桜の品種もあるので、このような品種を選ぶことも大切です。